DJ Kensei が鳴らして育む音像空間は息をして、雲の姿のように変幻自在に情景を移り変えていく。その空間に身を浸していると、いつも新しい広がりに触れる。それはただ新鮮な領域というだけでなく、音の余白に共振したり、深くに潜む感覚が柔らかく浮上してきたり、時間という概念から抜けだすほどの瞬間もあって、感じることを優先した心地よさにいつの間にか呑みこまれている。そんな時、体はごく自然な反応として揺られるように踊っているのだ。
作り出される音像と同じように、彼自身もまた変わり続けている。だからこそ全容は捉えがたい。そこで点を繋いで描く線からその輪郭に近づこうと、キャリアの始点からひとつひとつを辿り訊ねていった。すると、時にみずみずしい記憶を懐かしむように、時に宝物を見せてくれるような慎重さで、時にニュアンスを直感的に調律しながら、今の自分を成すこれまでの移ろいや経験や感触を彼だけの言葉で紡いでくれた。あらゆる必然が重なるその物語で中心にあるのは彼のまっさらな感性だろう。その感性がそれぞれの瞬間に見いだす微光を彼は大切に信じていて、それを汲んで映しだし、音楽というかたちで私たちに共有してくれる。