Madalyn Merkey
Interview (2021)
はじめに、あなたの感性や音楽についての背景を伺いたいのですが、幼少期はどのような音楽環境で育ちましたか?アメリカの中央に位置するオクラホマシティで育ちました。両親は医療関係の仕事をしていて音楽に親しみはなく、1990年代半ばにラジオを聴いたり、MTV で流れるミュージックビデオを見ることで音楽への興味が芽生えました。音楽から少し話は逸れますが、学校帰りに父と共に彼のオフィスへ行き、心電図
音楽制作を始める以前はどのような音楽やカルチャーに傾倒していましたか?クラスメイトが 8 名しかいない小さな小学校に通っていて、卒業後は音楽のサブカルチャーについてネットで調べたりもしました。ティーン向けの映画を見過ぎたせいで、仲間を見つけなければと焦る気持ちがあったのですが、結果的には杞憂でしたね。自分の馴染める居場所を求めて、中西部の町の文化の乏しさに失望した当時の経験によって、音楽表現に飢えている自分を心底理解することができたからです。10代の頃は Kraftwerk や Throbbing Gristle に聴き入っていて、それが音楽制作やこのシーンに関わる以前に自分の好みを形成しました。私が魅了された感情は、転覆と質感的な鮮明度だったと思います。それは、はっきりと耳障りでありながらも、本能的な魅力を備えた感覚でした。
では音楽だけに限らず、あなたのクリエイションに影響を与えた作品やアーティストは?今はロンドンの Tate Modern を散策しながらこの質問に答えているので、意識がアートに偏っています。Hans Haacke は私の原点にあるアーティストで、活動やシステムを表現した彼の作品は、アートの意義を押し広げてくれます。中には調査ジャーナリストのような性質を持つ作品もありますが、単なるレポートではなく、調査結果を実行するための必然的なアートとして発表されたものです。巧妙さや可愛らしさは感じられませんが、突き詰めていくと、その手順の厳密さに落ち着きが感じられます。第45回ヴェネチア・ビエンナーレでドイツ館の床を破壊した1993年の作品『Germania』など、リスクを厭わない彼の才能はたびたび脳裏を過ぎります。
創作のプロセスを教えてください。事前にアイデアをマッピングして、作りたい音の種類や最適な合成技術の選定に多くの時間を費やすことが理想ですが、多くの場合、先入観を持たずにただ音を作り続けています。習慣がクリエイティヴのステップを促してくれるのです。
あなたの音楽、特にライヴパフォーマンスには、リアルタイム性を持つジェネレーティヴアートに似たものを感じます。この捉え方に対する見解を聞かせてください。ええ。パフォーマンスの目的は、常に変化し、驚きのある音を出すことです。ソロでのパフォーマンスでは、コンピュータの独立した動作が重要となります。作曲時の指示どおりに機械が音を作ればいいのですが、実際はさほど厳格さを求めてはおらず、あらゆる結果が生まれることを期待しています。
以前はヴィジュアルアートを学んでいたそうですが、絵では到達できない表現の領域を感じたことが音楽制作へ移行した理由でしょうか?そうですね。ヴィジュアルアートは瞬時に消化されるのに、創作には苦しいほどの時間を要するのだと感じました。ある意味で、私は時間を捉えることに執着するようになり、音というメディアでの作業は制約が少ないように思えたのです。レコーディングを始めた当初は、時間をかけて情報を明らかにし、経験をナビゲートするという側面に魅力を感じていました。
では、音楽でしか表現できないことは何だと思いますか?音楽を通じて多くの人々の間で共有される経験を育み、その人の人生におけるあらゆる場面や瞬間に寄り添いたいと思っています。音で表現できるものを分類する正確な言葉が私にあるかはわかりませんが、感情的なレベルでのコミュニケーションが存在することは確かだと思います。
音楽制作を通じて追求していることは何でしょうか?録音したアコースティックサウンドを分析して、シンセティックモデルで再現するのが大好きです。これらの音をより長いインスタンスや、オルガンの倍音のように減算的なレイヤーのモデルに拡張することが私の狙いです。また、ピーナッツ型の緩衝材が地面に落ちる音や、冷蔵庫が冷却水を放出する音のように、珍しい音源から得られるハーモニックな素材にもすごく興味があります。
プログラムから生成される音は、自身の意思と共に偶発性も関連していると思います。これらのバランスについて特別なこだわりはありますか?私はカオスとコントロールの両方を求めていて、その間で揺れ動いています。まずは多くの素材を用意して、そこからより詳細に決定づけていくのがいいのかもしれません。また、現在研究している分野の 1 つが「ダイナミクス
この分野の音楽制作にはインスピレーションや独創性だけでなく、学術的もしくは数学的なイメージ能力や技術が求められると思います。その両者を併せ持ち、それらを融合させることに困難は感じませんか?そのとおりです。以前は幾何学的なパターンに関わる数学や、それを音楽的な機能に変換させることに強い関心があって、リサージュやベル曲線を用いてメロディの軌道を逸脱させたりしていました。けれど、自分が好むパターンを特定したとしても、本質的には合理的な比率に基づいて選択されるので、ある意味で数学は避けられないものだと思います。