彼の作品にはまったくやられっぱなしだ。それはもうずいぶん前からで、 CD ジャケットで初めて目にしたイラストレーション、独特のユーモアが滲むドローイング、そっけなくも可愛らしいタイポグラフィ、そして、画家としての魂が込められたペインティング。いつの時代のどの作品を見ても、ずば抜けたセンスの良さに脱帽して、「意味よりも前のなにかを、生々しく、あどけなく、するりと届く絵にしてしまう人がいる」と、心がときめく。
柔らかな笑顔で彼が語ってくれたのは、どこに向かうのかわからないまま、愚直なまでに “描くこと” に向き合い続ける日々だった。葛藤も喜びも、何ひとつ包み隠さず、実感のままに語る彼の姿に、絵にも通じる五木田智央の高純度の人間味を感じた。
今回の取材で惜しみなく披露してくれた数々のドローイングや写真にも、 “それ” は瑞々しく現れている。 1 枚ずつページをめくるように、ぜひ、ゆっくりと味わってほしい。