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Madalyn Merkey





あなたの作品はコンピュータから生まれるエレクトロニックな音なのに、とてもオーガニックな印象を受けます。その理由をどう捉えることができますか?
結局のところ、音楽はハンドメイドなのです。手首の動きまで録音したり、プログラムされた微細なディレイを音と音の間に入れることでわざと干渉的なラグを生じさせたり、多くの工夫を凝らしています。私の手が楽器に触れ、不器用なりにも自分の手法でプログラムをしているので、それらの音は本質的に私自身のものなのです。
音楽家としてのキャリアを重ねて経験や知識を得たことで、最も変化したことは何でしょうか?
私が今取り組んでいるのは、12から24個の波形を重ねていくような膨大な音の層を作ること。一度に 1 つの音に集中してしまいがちですが、システムにダメージを与えたり、波形をクリップ(音量の振幅が 0 デシベルを超えると発生するノイズ)させてしまうリスクは、音を重ねることで回避できるのだと、これまでの経験から学ぶことができました。
活動当初から変わらない姿勢や一貫したフィロソフィを教えてください。
一時停止や無に近い状態、そして静寂を味わうことです。オーディエンスに知覚の調整を求めるほどの、ある種のミクロ活動と言えます。特に騒音や音楽以外の環境では、初期モードは dB 制限を最大に設定する(音量を最小に抑える)ことが多く、空虚な瞬間を設けることを好みます。大きなステージに小さな音を存在させること、その点にずっと好奇心を寄せています。
あなたの楽曲は豊かな情景を思い描かせますが、創作に取り掛かる際は明確なイメージやコンセプトを持っていますか?
イメージは後から現れます。ある程度素材が仕上がり、それぞれのポイントの間のギャップを埋めるべくイメージが出てくるのだと思います。どんなに漠然としていても、ストーリーを作るにはイメージが重要です。私は時々自分のコンピュータミュージックから、火山現場をホバリングしてクレーターの深くから湧き出る溶岩や、火口に近づくにつれて厚くなる熱の層など、さまざまな活動の発見をイメージします。
カバーソング集『Standards』ではポップな楽曲をカバーしていて少し驚いたのですが、どのような視点で選曲したのですか?
『Standards』で取り上げた楽曲は、私がプライベートで愛聴している曲ばかり。これらのカバーソングはロックダウンをきっかけに、遠くにいる友人と繋がりたいという思いから生まれたものです。強い孤独感を抱いた時に、人々の様子を確かめたり、気分を明るくするには最適な方法でした。また、エレクトニックミュージックに取り組みたかった私には、サウンドテクニックに集中するための標準的な素材として、これらのポップソングはとても適していました。友人からの反響は上々で、アルバムとしてリリースするつもりはなかったのですが、完成した作品を披露するためのものとしてではなく、人々に喜びを与え、特別な気分になってもらうためのものとして発表することにしました。