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Ben Vida





 自分でも意外だったのは、モジュラーシンセや Max/MSP を使って、システムに基づく作曲アプローチに興味を持つようになったこと。しかもこれは、技術的な変化というよりも、むしろコンセプトの面での大きな転換でした。アナログとデジタル両方のシンセサイザーシステムを扱うようになって、複雑で生成的なコントロール経路を設計する方法が、自分のなかで  “作曲の新しいかたち”  を育んでいったんです。そしてその方法は、必ずしもシンセサイザーを使わない場面にも影響を与えるようになっていった。つまり、特定の生成システムに依存するというよりも、  “プロセスそのもの”  を軸にした作曲法です。
 この考え方は、最近の作品『Vocal Trio』(2024年、Blume Editions) にも明確に表れています。この作品は、 3 人の声を使い、加工や電子シンセは一切使っていません。それでも、コンセプトの土台には、これまで電子音を合成するなかで培ってきたアプローチがしっかり息づいている。言語をコントロールソースとして使うという発想もそのひとつです。