Francesca Gavin



残念ながら写真でしか見ていませんが『Mushrooms』は興味深い展覧会ですね。そもそも菌類に関心を抱いたきっかけは何だったのでしょう?
新しいアイデアを導いてくれるのは常にアートです。姉の Seana Gavin や多くのショーで仕事を共にしている Jeremy Shaw をはじめ、キノコをモチーフに起用するアーティストがいることに以前から着目していて、それがきっかけでキノコについて調べ始めたところ、知れば知るほど興味が深まっていったのです。キノコは植物よりも動物に近くて、多くの木や植物はキノコ無しでは生き残れません。キノコはいわば、現代におけるポジティヴな存在の魅力的なメタファーです。菌類に関するアート作品を集めた @theartofmushrooms という Instagram のアカウントも持っていて、これをまとめたヴィジュアルブックを制作したいと考えています。
キュレーションという仕事には企画力や実行力、管理能力など、さまざまな能力や感性が必要だと思いますが、あなたにとって「優れたキュレーター」に欠かせない要素は何だと思いますか?
そうした実践的なスキルも全て重要ですが、主だって必要なのは、オブジェクトを取りまとめ、新たなダイアログを作りだし、アイデアを伝達する能力だと思っています。キュレーターが誇示する展覧会は個人的に好きではありません。鑑賞者に刺激を与え、引きつけ、育むような、多くを得ることのできる展覧会を望んでいます。アートの領域を超えた観客にも届き、現代アートは新たな思考のためのインスピレーションに満ちた最たる領域のひとつだと気付いてもらえる展覧会を開きたいです。
自身がキュレーションを手がける展覧会で、そのテーマや方向性を参加アーティストに伝達する際に心がけていることは何ですか?
アーティストと一緒に仕事をすることが大好きで、常にアイデアの概要とその面白さについて伝えています。作品に何らかの関心を抱いたアーティストにアプローチすることがほとんどですし、他のキュレーターと同様、何度も仕事をしたアーティストがたくさんいるので、彼らのコミュニケーションや能力も把握しています。だから、大抵はどんなテーマであっても比較的スムースに運ぶことができます。面白いことに私がキュレーションを担当した展覧会の多くはサイケデリックやカウンターカルチャー、レイヴ、またテクノロジーとの幅広い関係などといったテーマに何らかの形で触れています。アーティストとキュレーターの根底にはもちろん深い信頼があり、そのうえで私の主な目的は、彼らの活動を可能な限り最善の方法で発表することだと思っています。
今回のパンデミックによる世界の変容は、自分の創作がさらに進化するための転換点になり得ると思いますか?
個人的にもクリエイティヴの側面においても、間違いなく大きな変革があると思っています。ロンドンでの 3 ヶ月に及ぶ隔離生活の後、現在の住処であるウィーンに移ってきました。巨大な都市よりも、この街のように徒歩で行き来できる規模の都市が適した時代なのだと感じます。ここに越してきたことで新しい場所や出会った人々、また、生活のあらゆるペースなどに刺激を受けるし、避難所としてのアパートメントも気に入っています。そして、今はクリエイティヴな行動がいかにポジティヴな影響を与えるかについて考察していて、アートと政治に関する本も執筆中です。また、前述のキノコのヴィジュアルブックに関心のある出版社を探しています。さらに、インスピレーションとイノベーションを見いだす時間を意識的に設け、気候変動への取り組みや国際的なファシズムの高まりへの抵抗の重要性を今は実感しています。
キュレーションや執筆、雑誌の創刊を手がける傍ら、ウィーンへの引越やダンスまで、とてもパワフルに活動していますが、このように困難な状況下であなたを突き動かしているものは何でしょう?
今年 (2020年) に入って私のモチベーションは大きく変わりました。最初のロックダウンの時は世界中を飛び回って活動できない状況に慣れず、旅行や展覧会などの刺激的な生活の代わりに 1 日 3 時間も踊ったり、驚くほどの量の原稿を書いたりして自分の生産性を保っていたのかもしれません。けれど、 7 月にウィーンに来たことで状況は劇的に変化しました。もともとはアートコレクションの 1 日だけの撮影ための訪墺だったけど、滞在期間は決めずにとりあえず 3 ヶ月分の荷物をまとめて来ました。そして、ウィーンの友人がイタリアに行く間アパートを貸してくれることになって、夏をここで過ごすことに。多くの友人を作って、毎日ドナウ川で泳いだり、素晴らしい毎日でした。最終的に素敵なフラットを見つけて賃貸することを決め、今はコロナの第二波のために留まっています。今も複数の書籍のプロジェクトを進行中だし、毎日 1 時間は踊っていますが、以前のように生産性が動機にはなっていません。今の私にとっては感情と内面がとても重要で、おそらく人生で初めて自分の感情や感覚と深く繋がろうと模索しているところです。今、私の生活はより穏やかであり緩やかで平和的です。心の健康を保ちながら幸せに新年を迎えることができれば勝ったも同然ですよね。
特にクリエイティヴに関して、今後の世界はどのように変化していくと思いますか?
主観的な傾向は弱まり、私も含めて皆、コラボレーションへの関心がさらに高まりつつあると感じます。人々のお金やエネルギーの使い方にも変化があって、利他的な要素の無いものは奇妙に感じるほどです。
読者に対して、未来へ向けたポジティヴなメッセージをいただけますか?
夢は見るのではなく実現してください。