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Koshiro Kihara



少し遡りますが、アートに触れた一番古い記憶は?
地元の美術館に行くこともあるし、グループ展で他の作家の絵を見る機会もあって、触れてはいるのですが、正直、印象としてはあまり残っていなくて……。
他のインタビューで「具体具体美術協会の作品から影響を受けた」と読みましたが。
そうですね。具体は兵庫で結成されたので、僕の出身地でもある兵庫の美術館で展示をやっていることが割と多くて。大学 2 年の時に兵庫県立美術館で具体の元永定正の作品を見たのですが、健志郎以外で他の人の作品を見て衝撃を受けたのはそれが初めてです。
衝撃を受けたものはその作風なのか、手法なのか、コンセプトなのか、具体的に何だったのでしょう?
「抽象と具象という相反するものを同居させる」という現在の僕の創作のコンセプトに繋がるのですが、当時は写実的なものを描きつつ「この具象的な画面から、それとは対照にある抽象的な要素を抽出できないか」と模索していた時期でした。そんな時に元永定正の作品を初めて目にして「色と形というものはこんなにも面白くて新鮮なんだ!」と。その気づきから、僕にとっての抽象は色と形という要素が大きいのだと認識するようになりました。
その「抽象と具象の共生」という概念はどのように明確になっていったのですか。
最初は風景を描いていたけれど、例えば高架下や螺旋階段の裏側などを描いていると、その中に配列やリズムを見いだすようになって。そうしたものが具象の中から浮き出てこないかと描き続けるうちに、構造というか造形の美しさや面白さが色や形というものに少しずつ明確になってきました。当初は既存のものの中から色や形という抽象の要素を抽出しようと描いていましたが、徐々にモチーフも自分で作るように変化してきました。