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A Series as the Door:
Unheard Sounds, Come Through
Jen Everett








Jen Everett
Interview (2023)
 









アーティストとしての独自の視点や審美性を自身ではどう捉えていますか。また、それを培ったあなたのバックグラウンドやアイデンティティについて聞かせてください。
黒人女性でありクィアであることが、この世界の中での私の立ち位置に影響を与えています。最近の作品では黒人の内面的な奥深さと向き合い、概念的かつ形式的な枠組みとして「断絶 (rupture)」を用いて制作に取り組んでいます。







Redoubled/Something We Carry現在進行中のこのシリーズでは、収集した黒人特有の写真を再構成することで、断絶と黒人の内面性の関係を探っている。
 
Untitled
Digital Collage
Variable
2019


Untitled
Digital Collage
Variable
2018
 
 
Untitled
Pigment Print
16 inches x 20 inches
2017

Untitled
Digital Collage
Variable
2018





プロフィールに「黒人が知識を生みだし、伝達し続ける無数の方法に関心を持つ」とありますが、この関心はいつ頃から明確になっていったのですか?
大学院時代、ある特定の知識がアカデミックな環境以外では無効化されることに気づき始めました。私は、厳密さというものは正規の制度を超えた実践の中にこそ存在すると信じています。私の作品ではそれを称賛することを目指しています。
当初はポートレートを中心に写真をベースとした活動をしていましたが、その後、収集した写真に反復やグリッチ加工、コラージュを施した『Redoubled/Something We Carry』シリーズを発表し、そして『Unheard Sounds, Come Through』シリーズはオブジェを組み合わせたインスタレーションという形態で発表しています。こうした表現方法の変化をあなたに導いたものは何だったのでしょうか。
亡き祖父へのオマージュとして、2017年に収集したオブジェを使った初めてのインスタレーションを制作しました。この作品がシリーズになるとは思ってもみませんでしたが、木製スピーカーやスライドカルーセル、カセットテープなど、似たようなオブジェを探し続け、スタジオに運び込んだそれらを配置し始めると作品が生まれました。




Unheard Sounds, Come Through: Extended Mix, 2022
Image courtesy of Baltimore Museum of Art
Photo: Mitro Hood




あなたのウェブサイトで『Unheard Sounds, Come Through』を拝見してひと目で惹かれました。なんの文脈もあなたの背景も理解していなかった日本人である我々がこのシリーズに魅力を感じた理由をどう捉えますか?
興味深い質問ですね。このインスタレーションを構成するこれらのオブジェに私が惹かれるのは、子供の頃に触れた時代遅れのメディア技術を思い出させるからです。箱型スピーカーやカセットテープ、レコード盤に対して私たちが共通の憧れを抱く理由は、現在では同じ機能を果たす技術が手中に収まるほど小型化されたからかもしれません。
このシリーズのアイデアが生まれた発端は何でしたか。そしてそれはどのようなプロセスを経て発展したのでしょうか?
収集とアレンジメントそのものがプロセスです。私は常にある程度はこうした方法で作業しています。起点となったアイデアは、素材とじっくり向き合い、それに対して何が魅力的なのかを考察したことで明らかになりました。
このシリーズのキャプションは拝読しましたが、これらのオブジェの選定やその構成によって伝達できるストーリーについてもう少し詳しく教えてください。
それは物語であり、少なくとも詩人であり学者である Elizabeth Alexander が「The Black Interior(黒人の内面)」と呼ぶものの提案です。私たちが表象という重荷から解放された比喩的空間なのです。
キャプションには「オブジェが丹念に積み重ねられ、並び替えられた」とありますが、実際にこれらをレイアウトしている時ですら何かを留意しているのか、もしくは、創造的な衝動に導かれて感性の赴くまま取り組んでいるのでしょうか。
私のプロセスはとても直感的です。オブジェを集めて並べながら、あらゆる構成を記録するために写真を撮り、必要に応じて調整しています。
このシリーズにおけるオブジェの構成に、建築の学士号を持つあなたの背景はどのように影響していますか?
建築を修学したことで空間、構造、物理の感性が身に付きました。そうしたスキルはこの作品制作にも生かされています。
これは進化するインスタレーションとのことですが、今後も進化する見込みはありますか?
インスタレーションの規模を拡大して、パフォーミングアーティストとコラボレーションしてみたいです。
あなたの作品には自身の家族の写真やビデオなどのアーカイヴを用いたものもあります。このシリーズで用いたオブジェにあなたの家族に由来するものは含まれますか。また、そうしたアーカイヴを用いる際、特に客観性は意識しますか?
ほとんどのアイテムは中古品店で仕入れています。それらも私のもとに来るまでには歴史があり、物質的な痕跡も残っています。創作において客観的であることにはこだわりません。ただ、何を明らかにし、何を隠すべきかを考慮する時は注意深く慎重でありたいと思っています。
あなたにとって作品制作が自身の内にあるものを表現する行為だとすれば、その  “あるもの”  とは具体的にどのようなものですか。また表現方法を変えてきたことで、その  “あるもの”  も変化しているのでしょうか?
それは本当にさまざまで、私が変化することでそれも常に変化しています。漠然としているように聞こえるでしょうが、それが真実ですし、そのことが私の好奇心を刺激し続けているのです。
最後に、現在取り組んでいるプロジェクトや将来に向けたヴィジョンについて聞かせてください。
私にとって初のソロミュージアム展示「Could You Dim the Lights?」が現在 Krannert Art Museum で開催されています。Amy L. Powell と Blair Ebony Smith による共同キュレーションです。この規模で自分の作品を発表できることをとても嬉しく思っています。また、進行中のプログラムにも期待を寄せています。この展示の一環で協力してくれたアーティストや学者の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。さらに秋には Rivalry Projects で展示が始まり、『Unheard Sounds』シリーズの追加作品も展示される予定です。その準備に向けて今は猛烈に取り組んでいます。
 この質問の「将来へのヴィジョン」に対する回答はもっと複雑です。将来のヴィジョンを考えると、国内外に限らず分断された不安定な時代に生きているのだと認識しなければならないからです。それが私の人生や創作にどんな影響を与えるのか明確にはわかりません。ただ私にとって確かなのは、ケアと協調を実践し続け、個人主義や孤立主義に抵抗し、持続可能な在り方を追求していかなければならないということです。