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Ben Vida





あなたの作品を聴いていると、これまで何気なく抱いていた音楽の定義が狭かったことに気づかされます。あなたにとって音楽の枠組みとはどのようなものでしょうか。
自分ではあまり定義していないと思います。ただ、いろいろな種類の作品をつくるのが好きで、物事を考えるときは他のメディアよりも音楽的な視点で捉えることが多いですね。音楽とは呼べないようなメディアやパフォーマンスの形態に取り組むことは、結果的に自分のつくる純粋な音楽作品を成長させるうえで、とても大きな糧になります。
新しい作品にとりかかる際、最初に立ち上がるのは音、もしくはコンセプトや言葉でしょうか。また、今のあなたにとって創作アプローチの軸になっているものは何ですか。
それはプロジェクトによって異なります。音から始まることもあれば、コンセプトや言葉、システムが先行することもある。そして実際ところ、誰かからの依頼や呼びかけがきっかけになって新しい作品が動きだすこともあります。そうした誘いの文脈のなかで、作品の構想が始まるからです。
 僕は常に、自分の取り組みのなかに本当の意味での実験的要素を保ちたいと思っています。それは時に、作品がうまくいかないこと、つまり、ある程度の失敗が伴うことでもあります。もちろん、物事がうまくまとまって、成功することのほうが望ましいけれど、安全な成功と引き換えに、実験から得られる発見を手放したくはない。そして、最近この  “実験する”  という姿勢が最も発揮されていると感じるのは、他の音楽家たちとの関わり方においてです。特定の方法論やメディア以上に、コラボレーターとの新しい関係性やコミュニケーションの方法を見いだすことこそが、新しい作品に向き合う際の核になっています。
最後に、最近の制作活動や、今あなたを動かしている関心や問い、新しく探求している方向性などを聞かせてください。
いくつかのレコード制作を終えたばかりで、今はリサーチと開発モードに入っています。スタジオに入って夢想的で奇妙なことに没頭できる、いい時間です。
Shelter Press からリリースの『The Beat My Head Hit』の続編にあたる『Oblivion Seekers』を春に完成させました。大量のテキストを扱う作業に戻って、ヴォーカリストとして再び活動したこと、そして、Nina Dante、Felicia AtkinsonChristina Vantzou といったシンガーたちと仕事をできたことは、本当に素晴らしい経験でした。今回用いたヴォーカルスタイルでは、すべてが高度にシンクロし、リズム的にも精緻で、そのパフォーマンスは本当に魅惑的です。
 また、Play Time としてのアルバムも完成しています。このグループでは現在、自分たちのやり方を進化させて、多くの新たなレコーディングを制作している段階です。本来ならばもうリリースしていてもいい時期だけど、今は人前で演奏して、音楽が成長していく様子を感じられるのがとにかく楽しくて。メンバー全員が近所に住んでいて、演奏する時間と場所があるおかげで、物事をとてもリラックスした自然なかたちで育むことができています。
 数年前に妻の Katy とニューヨークを離れて Shady に移住したときは、この場所で気の合う人たちと出会い、一緒に音楽をつくったり交流したりできるコミュニティが持てるのか、少し不安でした。でも、ここで素晴らしいコラボレーターたちと出会えたことは本当に励みになっていて、その輪は年々広がっていると感じています。