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Davis Ngarupe and JP Haynie / Actual Source
Interview (2022)
 




 2 人のルーツから伺いたいのですが、幼少期はどのような環境で育ちましたか? また、若い頃に夢中になっていたことがあれば教えてください。
Davis幼い頃は父の出身地であるクック諸島で育ったので、マオリの文化やドラムは僕ら家族の日常生活において大きな位置を占めていた。絵を描くことも好きだったけど、アートに触れる機会はあまりなかったね。小学生の時に母の出身地であるカリフォルニアへ引っ越し、中学生になるとスケートボードを始めて、そこで自分が夢中になったスケーターやスケートビデオ、スケートカンパニーからの影響で、音楽やアートに興味を持つようになったんだ。
JP僕はユタ州の出身で、 7 人兄弟の大家族の中で育った。芸術的な家庭ではなかったけど、みんな音楽が好きで、僕も音楽を学びながら成長した。そして、音楽を通じてアートや物づくりに関心を抱くようになったんだ。
グラフィックデザインに関心を抱いたきっかけは何でしたか?
Davis僕の元ルームメイトである Jon Troutman と Bardhi Haliti が2005年から2006年かけてユタでグラフィックデザインを学んでいた。彼らのプロジェクトに触発されたことがきっかけでグラフィックデザインへの関心が高まり、アートスクールを志願することに。そして、オーティス美術大学で学ぶためにLAへ移り戻ったんだ。
JP印刷をはじめ、僕は常にものを作ることに関心があった。だから当初は印刷の仕事に就いたけど、グラフィックデザインの存在を知って勉強し始めたんだ。
 2 人は出会って数年経った後に同じデザインスクールに通われたのですよね。
JPいや、通っていたのは別のデザインスクールだった。だけど、僕らはデザインの勉強を始める以前からの旧友で、タイポグラフィやブックデザインに対して同じような関心を抱いていた。デザインのプロジェクトや魅力を共有できる親友がいるのは素晴らしいことだよ。
その後 2 人でスタジオを創設しましたが、その経緯を教えてください。また、当初はどんなスタジオを目指していましたか?
JP一緒にスタジオを持つことは学生の頃から計画していて、今思えば甘い考えではあったけど、いくつかの機会に恵まれたことで確証に繋がった。そして2015年に挑戦を決意したんだ。当初から僕らはブックデザインの案件を強く望んでいたけど、実際は書籍のデザインや出版の経験なんてほとんどなかった。だから、いっそのこと自分たちで本を作って出版することにしたんだよ。そうすれば勉強や経験にもなるし、僕らの仕事を見てデザインの依頼が届くようになるんじゃないかって。今も出版は続けていて、狙いどおりブックデザインの依頼も増えてきているよ。
Davis出版を通じて、特に僕らのシリーズ刊行物『Shoplifters』では、面白くて思慮深く、知性豊かな多くのデザイナーと知り合うことができた。彼らはとてもオープンで、たくさんの知識を共有してくれたし、僕らもそこから多くを学ぶことができた。その経験を通じて僕らの仕事の手法も変わり、進化を続けている。だから、スタジオとしての目標も常に変化しているよ。
印刷物やブックデザインにそこまで惹かれる理由は何でしょうか?
JP僕らが本に惹かれるのは、その題材と接するための理想的な手段だから。それに、本の収集や本に囲まれていることが単純に大好きなんだ。昨年「Why Books?」というタイトルの T シャツを作ったんだけど、まあ、それが僕らの答えだよね。
一方で、ウェブサイトなどデジタルメディアのデザインも手がけていますが、テクノロジーの進化にはどのように対応してきましたか?
JP興味のある分野だから、そうした仕事はできる限り挑戦するようにしている。書店を運営するためにも必要なスキルだし、これについては 2 人で頻繁に話しているよ。
都会ではなくあえてユタに拠点を置く理由は何でしょうか?
JP僕らはここでの生活がとても気に入っている。山々に囲まれていて、家族のそばにいることがすごく大事なんだ。スタジオを始めた時、僕らはそれぞれに子供がいて家庭があった。だからユタを離れるなんて考えられなかったんだ。
自身のスタジオを構えて経験を重ねたことで、デザイナーとしての見解にどのような変化がありましたか?
JPグラフィックデザインからの影響は最小限に留めて、不要な関心を抱かないこと。それが僕らの活動の助けになっていると思う。
では逆に、当初から変わることのないフィロソフィや姿勢を教えてください。
JP自分たちの興味のあることをできる限り追求し、その過程で自ら学んで成長すること。そして、一緒にいて楽しい人たちと仕事をするように心掛けている。
 Actual Source はデザインスタジオとしてだけでなく出版社や書店としても機能し、さらにアパレルまで手掛けていますが、こうした展開は当初から計画していたのですか? どうのようにしてこの全ての活動を可能にしているのでしょうか?
JPこれは最初から計画していたことだよ。自分たちのプロジェクトのための時間を作るには、確かにかなりの努力を要する。気を抜くと、コミッションワークのことで完全に頭がいっぱいになってしまうしね。これらのバランスを程よく取れている時が最高に幸せだから、全力を尽くしてそれを実現させているんだ。
制作の際は最初から最後まで 2 人共に作業するのですか?
JPこの 8 年間ずっと僕らは隣り合って座っている。あらゆる方向性を模索したり、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないかを話し合い、それぞれのアイデアを発展させるために互いに助け合い、冗談を言ったり、ただハングアウトしたりと、いつも一緒に取り組んでいるよ。
コミッションワークの際のアプローチを教えてください。Actual Source Book のプロジェクトとはかなり異なりますか?
JPクライアントに向けた案件では全てが異なるよ。自分たちで本を作る時は、大抵僕らが意思決定を下しているからね。でも、他の人との仕事では普段とは異なる方向性を見いだせるから、それもまた素晴らしい経験なんだよ。
クライアントには Nike などの国際的企業も並ぶ一方で、 Actual Source の作るデザインには大手事務所とは異なる遊び心や手作り感のようなものを感じますが、そうした制作はインディペンデントなスタジオだから可能なのでしょうか。意見を聞かせてください。
JPインディペンデントであることが理由なのではなく、あくまでも僕らの制作のメソッドがそうした結果を生み出している。僕らは長いこと一緒に仕事をしてきたから、僕らにしか作れないものを生むための思考やコラボレーションの方法を共有できているんだ。
あなた方の表現や美的感覚を支えている根本的な要素は何でしょうか?
JPタイポグラフィだね。僕らにとって執筆、描写、彩色、構成といった全てにおけるメインツールはタイポグラフィだと言える。
ではタイポグラフィについて、その選び方から文字組みまで、二人が共有している規準はありますか?
JPプロジェクトによって全てが異なるんだ。
パンデミックによって起きたデザイン分野における変化をどのように感じていますか?
JP僕らは皆、友人やクライアントとリモートで仕事をする術を学んでいる最中で、この 2 、 3 年は誰にとっても容易いものではなかったと思う。オンラインでのコミュニケーションは普段とは異なるエナジーを要するけど、それがより通常化してきているよね。
最近のデイリーライフを教えてください。どんなことに楽しさを見いだしていますか?
JPデザイン以外の趣味を見つけようと努めているよ。
個人的な希望を含めて、今後の予定や展望を聞かせてください。
JP僕らは常により大きなスケールでの仕事を目指している。もっと多くの本を出版して、できればシューズも手掛けてみたいし、タイプデザインももっと上達したい。昨年はワーク・ライフ・バランスの向上に力を入れていたけど、今後もそれを継続していきたいと思っているよ。