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DJ Kensei



パーティでの DJ に関して、現在に至るまでにどんな変化がありましたか。
“その場を盛り上げる”  という感覚よりも、そこにいるそれぞれが「その場にハマれた」とか「空間的によかった」「発見した」と思えるようなムードを作れたらいいなって思いでやっています。「滞在してしまった」的な。役割もあると思う。
 DJ の表現は広がって多様化もしているし、もっと言えばミュージシャンでもビートメーカーでも DJ 的なアプローチで楽しめるようにもなった。基本的にパーティ DJ のコンセプトはパーティの種類の数だけあると思う。本当はパーティやコミュニティの数だけ音があるだろうね。  “ダンスミュージック= PARTY”  だけじゃないパーティもたくさんあって、大人になってもサードプレイスとして機能しているのもいいなと思う。そんな場所で子供が踊っていたり。サブスクのプレイリストとかでホームパーティはできてしまうから、しがらみの無い音楽や音像だけで楽しめる空間や技術などに今は興味や関心があります。
オーガナイザーから求められるものと自分のやりたいものに温度差を感じたことは?
その環境でやるということは、その枠組みの中で表現しないといけないから、本当に自分の表現をしたい時は環境づくりやサウンドシステムの作り方も必要になると思う。そんな感じでやらせてもらっている代わりに自分も常に学ぶことが多いです。
 過去にはイメージを共有できていないことがあったりもしたけど、今は自分が良い心持ちでいられることを重視するようになって、適度な温度感で素直にやれているかな。
2018年の「GLOBAL ARK」以降、いくつかの野外パーティで Kensei くんの DJ を改めて体感しましたが、前の DJ がどんな勢いだったとしても DJ Kensei に代わると別世界にすっと導かれたことが何度かあります。DJ 交代のタイミングで特に意識していることはありますか。
無になります (笑)。場所やパーティによっては前の DJ の流れを汲んでいるけど、ありがたいことにあまり気にしなくても大丈夫。自然と何かしらの空気を感じ取ってはいると思います。そこで鳴らす音像感は日頃から自分の引き出しに積み重ねているので、解放した時にそれを即興でどれだけ表現できるか。その場の環境や雰囲気を感じて、クリエイツの中から「こういうフィーリングならコレかな」って感覚重視で臨機応変にやらせてもらっています。
事前にセットは決めない?
もちろんイベントやパーティーによる。今一番自分らしい感じでやらせてもらうと限定するなら、ほぼ決めない状態でやりますね。もちろん大きなイメージは持って臨むし、大まかに作ってあるクリエイツの中から選ぶけど、「託されたその時に自分は何ができるだろう」って感じで。パーティではいろんな人の気が充満しているし、それぞれの思惑も異なるけど、そういう状況でも勢いだけではない良い空間を作りたいと常に思っています。そのためにはある程度の時間の集中も要するし、 PA や音像の成り立ちもかなり影響する。だから煙に巻くじゃないけど、フロアのエネルギーをコントロールできる程度の音量感で、好きなノイズやフィールドレックの素材を混ぜて生き物のようなグルーヴを作っていくとか。そんな素材をたくさんフォルダに入れておいて、その場で開いてみるんです。そういう空気から徐々に曲へ移っていったりするのが好きだった時期もあります。ストーリーってライヴだと思います。
音楽的要素としてのフィールドレコーディングの魅力って何でしょうか。
ライヴでも制作でも、ある情景から汲み取った音を加えてその独自のムードを足すことで、そこから新たな空間やシーンを作っていくことができる。耳が広がる。自然の中で録った気持ちのいい滝の音をビートに被せたら、それが微かに聴こえる程度の小さな音でも、マイナスイオンのような気持ちのいいフィーリングや周波数、奥行きが加わる。ハイハットにもベースにもメロディにもなる。そのフレーズに著作権のないストーリーがある。見えないエネルギーみたいなものや必然的なモーメントを足すことでムードがビルドしていったり気持ちが解放されたり。