当時のインタビューでは「午前 1 枚、午後 1 枚くらい描くのが日課」と話していましたが、その個展以降も日課は継続して?いや、続かなかったです
少し話は戻りますが、 NY での初個展で発表した最初のモノクロのペインティングは、具体的なアイデアがあって生まれたのですか?個展を前に「どうしようかな」と考えていた時、たまたま白と黒のガッシュという絵具で遊んでいたら、すっごく綺麗なグラデーションができたんです。自分でも「これはやばい!」となって、ここから何か発展させていきたいなと。それがきっかけですね。黒から白になるグラデーションのサーっていうのが気持ちよくて、その快楽だけで始まっちゃった。そこからはもう白と黒の世界に魅了されちゃって。
以降はモノクロの作品が長く続きましたよね。そう、ずっとやっていたんだけど、これまた「もう白黒は嫌だ」ってなったからやめちゃうっていう……
2020年のミラノの Massimo De Carlo での個展「Game Over」から急にカラー作品に……そう。誰にも言わずに。
突然の路線変更でしたが、自身に不安はなかったですか。めちゃめちゃありましたよ。白黒で評価されたキャリアを水に流してしまうようなものなので。このままモノクロを続けたほうが安定はするだろうし、「だったら同時並行してやればいいじゃん」っていう自分と、「いや、そんな甘いことじゃ駄目だ」という自分もいて、やっぱりすごく悩みましたし、大きな決断でした。だけど、もう飽きちゃったし、嫌なものは嫌だと。だから「もう、行っちゃえー!」って。
あと、あの表情のない世界観が俺の中で突然ダサく見えたんです。あれに似た顔のない絵が世の中にぐわっと増えてきて、世界中の知り合いが「トモ、おまえの真似っこ見つけたぞ」って Instagram とかの画像を面白がって送ってくる。最初は真似されて嬉しい部分もあったし、俺も笑っていたけど、そのうちに、パッと見、自分でも俺の絵かと思うほどかなり似ているものが出てきて。そんなこともあって、自分の絵を見て「なんかダセえな」と思うようになってきちゃった。
それに、以前から「パターンも決まってきちゃったし、そろそろ違うことがやりたい」と思っていたんです。いわゆる予定調和ですよ。そうなると、もうつまらない。自分の作品の最初の観客は自分自身なので、やっぱり驚きが必要なんです。だけど、驚きがなくなっちゃったから、想定をひっくり返してやろうと。
正直なところ、それはいつ頃から?実は結構前からで。15年くらい前に LA のギャラリーで結構デカい個展をやった時に、白と黒じゃなくて、白と青の作品を描いたんです。いわゆる僕の “青の時代”。