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Tomoo Gokita





カラーにしてからそういう作品は?
まだないですね。カラーはまだまだ途中過程というか。今はちょっと限定した絵具を使っているんですけど、学生時代ぶりに油絵に戻ってみようかなって考えていたりもして。だけど、油絵って乾きが非常に遅いので、それがちょっと自分には向いてなくて……。いろいろと試行錯誤中です。
五木田さんは感覚重視で創作しているようですが、どこかのタイミングで論理的に考察してみることはありますか?
色の配合について考えることはあるけど、それもまあ感覚的なものなので、論理的に考えるなんてほぼないですね。もう直感のまま。いくら頭で考えてみてもどうしたってうまくいかないし、結局やってみないとわからない。だから、どこかの記事で「五木田智央の文脈を考えると……」とかって書かれていても、「いや、俺、文脈とか考えてないし」って(笑)
とことん純粋な表現なのですね。
もう、そうとしか言いようがないんですよ。
でも、何を表現しているのでしょう?
「あんた、本当に馬鹿なんじゃないの」って思われるかもしれないけど、本気でわかんない。自分でも「何を描いているんだろう、俺」みたいな感じなので。
すごく自由に思うがまま創作しているように見受けられますが、「本当はもっとこんなことをやりたい」ということはありますか?
もっと自由になりたいですよ。そればっかり考えていますね。結構不自由なもんですよ。
「もっと自由に」というのは?
自分でも「他人の反応とか何も気にせずに、もっと好きなことやればいいじゃん」と思っているのに、「ちゃんとした作品にしなきゃ」とか「これは美術として成立するのか」って考えちゃう自分もいる。やっぱりどこかでストッパーがかかっているんですよ。だから、次の LA の個展ではそれを外して、かっこいいと思ったらドローイングでもすごくちっちゃい絵でもバンバン出しちゃおうかなって。最初の NY のグループ展の時はそのくらい自由だった。超好きなことしかやっていないんで。
 他の取材で「自由に絵を描いていて楽しそうですね」って言われたけど、実際のところは、全然楽しくはないですから。
没頭して描いている時は快感なのかと。
絵が出来あがっていく時に「うわぁー」って覚醒するような快感はありますね。だけど、楽しいっていうのとは違う。楽しいっていうのはやっぱり趣味の世界ですよ。音楽を聴いたり、オーディオいじったり、自転車のパーツをいじったり、そういうのは趣味なので超楽しい。でも、絵を描いている時は楽しくない。
 例えば、友達に頼まれたチラシや T シャツのデザインは今もやったりしていますけど、こういうのは  “自分の作品”  とは違うわけです。デザイナー感覚っていうかね、絵画とは関係のない頭が働く。だから気楽ですね。とはいえ、ひどいもんですよ。10年くらい前に Mac が壊れてからはインスタントレタリングを使ったり、すぐそこにあるコンビニでコピーして切り貼りして仕上げちゃったり。スキャナーもかなり前にぶっ壊れて、ここ最近は全部 iPhone で撮影してコントラストをちゃちゃっと調整したり。デザイナーやっていた時はあんなに Mac でカタカタやっていたのに、今はもう全部手描きとか手作業で。その場でひらめいたものをマジックで描いて「はい、できたよー」みたいなのもたくさんあります(笑)
 あと、レコードジャケットも結構やっていますね。最近だと細野晴臣さんの名盤『HOSONO HOUSE』のカバー盤 LP のジャケット。依頼をいただいた時は「やる!」って即答しつつも、大好きなアルバムだからこそ荷が重くて。だけど、描き始めたら40分くらいで完成しました。先行リリースした他の人の EP ジャケットを見たらコラージュとか凝ったイラストとかだったので、「ならば、これはなるべくそのまま描いたほうが面白いだろう」と、オリジナルジャケットを忠実に、黒だけでサササッと描いたんです。