The Days till Now
Piczo
The Days till Now
Photographed by Piczo
Models
Photographed by Piczo
Models
3
Ai Kamoshita
15 Arika Polkey
24, 38 Hibari
30 Shohei Kashima (left)
Sohey (right)
31, 33 Work from Toru Ishii
34 Sui
36 Yuka
39, 47 Asuka Ito
41 we+
44 Akari Michishita
49 Miu
50 Eiji Takahashi
58 Wellington
15 Arika Polkey
24, 38 Hibari
30 Shohei Kashima (left)
Sohey (right)
31, 33 Work from Toru Ishii
34 Sui
36 Yuka
39, 47 Asuka Ito
41 we+
44 Akari Michishita
49 Miu
50 Eiji Takahashi
58 Wellington
And Interview
Piczo
Interview (2021)
まずバックグラウンドを伺いたいのですが、強く影響を受けたカルチャーや人物を教えてください。なんですかね。漫画はたくさん読みます。あと、僕が20歳くらいの頃に青春パンクがすごく流行って、そうした音楽やミュージシャンにはかなり影響を受けました。マキシマム ザ ホルモンや 10-FEET とか、当時はあまり売れていなかったけどすごくかっこいいことをやっていて。あるバンドマンに「美大生なら俺らの写真撮ってよ」と言われて、そこから在学中はバンドマンの写真ばかり撮っていました。それを機にその界隈のバンドマンたちとすごく仲良くなって。生き方というか、信念や情熱みたいなものを彼らから学んだ気がします。一方で、当時は広告全盛の時代で、美大では同級生にアートディレクターの小杉幸一や池澤樹、 1 年上には長嶋りかこなど、広告業界を目指している人が多くいて、彼らからの影響もありました。学校ではまさに『左利きのエレン』みたいな世界で、学校の外ではバンドマンたちと遊んで、それぞれに違う世界で面白かったですね。
武蔵野美術大学では写真専攻ではなかったのですか?そうです。僕がいたデザイン情報学科は当時、英語、国語、数学の学科試験だけで入れたので。デッサンの経験もないまま入ってしまって、絵が描けなくて苦労しました。共通絵画とか共通彫塑とかいろいろとやらされて、地獄のような日々でしたが、とりあえず休まずに通っていました。写真に興味を持つようになったのは、大学 1 年生の時に付き合っていた彼女が写真をやっていた影響が大きいかも。あと、絵が描けないことも写真を選んだ理由のひとつかもしれない。写真はとりあえずシャッターを押せば撮れるので。
その後、ロンドンの学校を選んだ理由は?武蔵美を卒業する段階で「やっぱりカメラをやりたい」と思ったけど、デザイン科にいたのでカメラマンになる方法がよくわからなくて。だから、とりあえず写真の学校に行けばいいのかなって。親に相談したら「もう一度学校に通うなら海外の学校へ行きなさい」と。「ラッキー。じゃあ、そうするわ」って。それでアートを勉強するなら NY かロンドンだろうなってざっくりした感じで。
ロンドンでフォトグラファーとして活動を始めた当初の状況はいかがでしたか?カメラマンってすごく先行投資がかかるんです。最初はテストから始めて、徐々にエディトリアルの仕事が入ってくる。けれど、ロンドンでは雑誌の仕事における撮影の製作費はカメラマン持ちで、スタジオとかチームの移動費や食事代なんかもカメラマンの自腹。そのためにたくさんバイトをして、雑誌の撮影でお金がなくなるという負のサイクル。それである程度雑誌に名前が出るようになると、ようやくそこからコマーシャルの仕事が入り始める。最初はその負のサイクルを必ず通らないといけないし、雑誌の仕事に辿り着くまでにもコネクションや英語力が必要なので数年はかかりました。だから、写真よりも生きるための作業がすごく大変。海外での活動は努力と結果が割に合わないので、努力を努力と思わず楽しく生きていける忍耐力が必要ですね。
現在もそうした負のサイクルの中にいるのですか?今でも雑誌の仕事は自腹なので、あまり変わっていないですね。でも、プロダクションにかかるお金が増えた分、コマーシャルの仕事の規模も徐々に大きくなってきたので、そこでそれなりのギャラをいただける。だからサイクルのサイズが大きくなった感じで、今も生きていくのに必死。「今年も写真でご飯食えたな」って毎年思っています
日本とはだいぶ事情が異なりますね。ファッション界における雑誌とコマーシャルのシステムが根本的に日本とは違いますね。それにロンドンは新人に優しいというか、雑誌やメディアが新しい才能を汲み上げてくれる点で長けている印象です。そもそも雑誌での仕事はいわば自腹の作品撮りみたいなものだから、「自分のやりたいことをやらないと損」という気持ちがある。もちろん編集部から「こういう感じのことをしてほしい」という一応のディレクションはあるけれど、クリエイティヴがカメラマンやアーティストに寄っているので、ある程度の融通が効く。雑誌でお金は稼げないけれど、クリエイティヴを発揮できるし、他の国に比べるとカメラマンとして自分の色は出しやすいのだと思います。
日本と比べた時の誌面や写真のクオリティの差はそうした背景が関係しているのでしょうか?まず、みんなの仕事にかける気合いが違います。それは写真に限らずスタイリストやヘアメイクさんも同じで、自分がやりたいと思ったことは自腹でやらないといけないからシリアスですよね。その真剣さがクリエイティヴの高さに繋がっているのだとは思います。だからと言って、僕は日本とイギリスのどちらがいいとは言いづらい。クオリティはこっちのほうが高いし面白さもあるけれど、ずっと大穴を狙っている感じなので、それを続けていくのは大変だし、人生としてそれがハッピーなのかと考えると疑問符が浮かんでしまう。日本では写真だけで最低限生活はしていけるから、どちらの価値観を求めるかってことですよね。
案件によって異なるとは思いますが、撮影前に構図やイメージは想定しますか?偶発的で予想できない撮影のほうが楽しいけれど、撮影の規模が大きくなるほど事前の承認や準備が必要になるので、その場合はある程度決めてから臨みます。でも、できるだけそこからはみ出したくて、現場ではどうやって偶然を起こすかって気持ちで撮影に挑んでいます。感動とか衝動がないとなかなかシャッターって切らないじゃないですか。「わお!」って思いたいというか。もともとあるイメージに近づける作業では、それ以上のところには辿り着けない。だから、ムードなどの大筋は決めていくけど、構図やアングルまで決めることはないですね。あと、撮影はロケが多いので、事前に決めたところでその通りになることなんてないし、現場は何が起こるかわからないので、状況に応じて遊ぶって感じでしょうか。
撮影の際は被写体との距離感や関係性は意識しますか?そうですね。できるだけ近い距離感で撮るようには心がけています。被写体が人物の場合は特にできるだけコミュニケーションを取って、動かして何か起きないかなって思っています。じゃないとガチガチの写真になってしまうので。
シャッターを切って「今、撮れたな!」って感覚はありますか?そういう波に至る時はあります。でも、ある程度撮れたと思っても、そこからもう少しプッシュしてみます。アングルを全く変えてみたり、モデルさんに違う動きをしてもらったり、もっと面白いことを起こそうと試して可能性を広げてみる。あとは、フィルムが終わって巻く前にあえて蓋を一度開けて、最後の 3 枚くらいを反光させてみたり。ある程度の予測はしつつも、そこから少しでもはみ出そうとちょっとしたチャレンジをねじ込んでいくというか。世界のトップで活躍する写真家はそうしたチャレンジを突き抜けてやっていると思う。そうして面白い作品を作って、クライアントの要望にも応えて成功させている。彼らは発想も度胸も尋常ではないと思うし、やっぱり写真ってすごい世界だなって感じます。
場数を踏むことでしか得ることのできない写真家としての能力は何でしょうか?周りに動いてもらう人間力みたいなものでしょうか。別にすごい統率力がある必要はないと思うのですが、関わる人たちに「その人のために頑張るか!」って思ってもらえる力というか。あとは、現場では思いどおりにいかないことがほとんどだし、予想しないことがめちゃくちゃ起こるので、うまく行っていない時でも無理矢理持っていける力ですかね
無意識にも自分の写真に滲み出る「自分らしさ」はどんなものだと思いますか?なんですかね、とても難しいです。緩めな感じですかね?
自身のキャリアで転機となったプロジェクトは何でしょうか?やはり『i-D』に取り上げてもらったのは一番大きかったですね。 Wooyoungmi のキャンペーンも数シーズンに渡ってやらせてもらえてすごくよかったです。あとは V&A のキャンペーンの話をいただいた時はびっくりしました。
ポラロイドから iPhone まで撮影ツールはとても幅広いですが、Piczo さんの表現に最もしっくりくるのは、やはりフィルムですか?最近はフィルムスキャンしたものをインクジェットか印画紙にプリントして、それをもう一度スキャンするのにハマっています。デジタルだとどうしてもシャープでエッジが立ってしまうので、それをマイルドにするためのリタッチにすごく時間がかかる。フィルムもデジタルもブラッシュアップの作業はどちらも大変ですが、フィルムのほうがパッと出てきた時の色が綺麗だし、結果的に早いですね。
撮るのは一瞬なのに、撮影後のそうした作業が大変ですよね。撮影後だけじゃなくて撮影前もすごく大変です。これも日本とは異なる点ですが、こっちではプロジェクト毎にトリートメントというムードボードのような資料を作らなければならない。ルックやキャスト、キャラクター設定、セット、プロップとか、ライティングの具合やどんなカットを撮るかなど、そうしたことを参考資料としてまとめた上で提案することもフォトグラファーの仕事。そしてそれを基にチームが動いていく感じです。だから、リサーチを含めてトリートメントの作成にも結構時間がかかるんです。
日本の場合だとそれはディレクターの仕事ですよね?そうですね。日本では広告でも何でもグラフィックが強い印象です。打ち合わせで絵の中のグラフィックの話はするけど、キャラクターの話は全然出てこない。でも、撮影では人物のキャラクターが一番重要で、そこからどう色付けしていくかって流れで構成しないと、撮影で困ることになります。逆に、キャラクターさえしっかり決まっていてチームで共有できていれば、現場で何が起きてもある程度はどうにか対応できるんです。
日本と海外の両方で仕事をしている Piczo さんならではのリアルな見解ですね。それに日本での仕事の場合は、まず、この案件は誰のためのものなのかがはっきりしないことが多いです。編集部のためなのか、僕のためなのか、クライアントのためなのかが曖昧で、ミーティングが多い割に決まらないことも多い。恐らくお金の出所がどこかっていう点が関係していると思うし、もちろんロンドンとは違ってお金をいただいている仕事なので、要望に応えようと努めます。そのうえで「こうしたほうがいいのでは」という意見は出します。ただ、提案はできるけど決定権は僕にはない。それでもやはりある程度の方向性が見えないとやりづらいので、僕は日本の仕事でも必要な場合はムードボードを作って提案するようにしています。 OK にしても NO にしても何かしらのリアクションがあるので、方向性が少しは明確になると思うんです。
今後こういう仕事をやりたい、といった具体的な目標はありますか?なんだろう。いい雑誌の仕事を 1 シーズンに 1 回はやりたいけど、この壁がなかなか分厚くて。これは先日友人と話していたことですが、僕らはきっと前世が虫とかで、人間としての人生が初めてなんですよ。でも例えば20代前半でワールドキャンペーンを撮っているフォトグラファーは人間がすでに 5 回目とか。しかもそのうちの 1 回はアートに触れているはずで、人間 1 回目の僕らでは到底太刀打ちできない。それくらいの差を感じます
写真家として醍醐味を感じるのはどういう時ですか?やっぱり素敵な瞬間を撮れた時は単純に嬉しいですね。あと、ファッションの仕事なのに服が写っていない写真が採用されたり、 35mm で撮った写真が大きな仕事で使われたりした時は「やってやったぜ!」って。大きな予算をかけてきちんと準備をすれば、誰でもある程度いいものは作れるじゃないですか。でも、そうではない、偶然が生かされたもののほうが写真的な面白さを感じるし、そういうところに押せば撮れる写真ならではの魅力を感じます。
では、写真家として活動を始めてからこれまでに抱いた最大の葛藤は?もっとうまく英語が喋れたらいいなって。あと、日本人が海外でやる意味ってあまりないというか、不利でしかない。例えば、最近僕がすごいと思っている写真家の一人、Rafael Pavarotti。彼の色彩感覚ってアフリカのベースがあって生まれたものだから、日本に生まれた僕らではどうにも辿り着けない。そう考えると自分のそれは何だろうってすごく考えるし、なぜそれをわざわざロンドンでやるんだろうって矛盾は感じます。荒木経惟さんや森山大道さん、北島敬三さんなどはヨーロッパでも高く評価されているけれど、それは、西洋文化に迎合したわけじゃなくて、日本で独自にやっているものが評価されている。そう考えると、日本人なんだから日本で日本人を撮ったほうがよくないかって。それに、こっちであえて日本的な要素を意識して撮ると「それっぽい」感じのものになってしまうし、逆もまた然り。だから、日本では日本らしいことをしたいし、こっちでやるならこっちでできることをやりたいなって思います。
プライベートでも普段から写真を撮っているようですが、どんな瞬間や被写体を目にした時に「撮りたい」という衝動に駆られますか?仕事はどこまで行っても仕事というか、自分の一番好きな写真が選ばれることはまずないですし、仕事の写真って何かしらの目的がある。例えばコマーシャルの仕事であれば、やっぱり商品をどういうアプローチで見せるかということが根底にあるので、普段はそうじゃないものを撮っています。単純に好きな人とか友達とか風景とか
今回寄せてもらったフォトストーリーもプライベートの写真ですよね。「The Days till Now」をどのように解釈したのでしょうか?今年の 3 月に仕事で日本に来て、ロンドンに戻るまでのストーリーです。僕が出発した時はまだロンドンはロックダウン中で、日本に着いて 1 週間の隔離期間中に、今度は東京に緊急事態宣言が出てしまった。制限されているほうにわざわざ出向いた感じが面白かったので。そして 4 月にロンドンへ戻ったらロックダウンがすでに解除されて、お店もレストランも開いているし、ほぼ日常に戻っていた。それにイギリスは外では誰もマスクをしていないので、通りを歩いていると視覚的な雰囲気が全く日本とは違う。だから「日常的な今に戻るまでの日々」みたいな感じのストーリーです。
今後の予定を教えてください。来月、初の写真集を出版します。『nikki』というタイトルで、文字どおり普段撮っている写真です。7 月 8 日からパリの Maison Kitsuné Filles du Calvaire でエキシビションと写真集の先行販売を行なって、その後、 8 月下旬か 9 月あたりに日本でブックラウンチを改めて開催する予定です。また、他にもう 1 冊、ポートレートの写真集を出版する話も進んでいるので、よろしくお願いします。
大阪出身。東京の武蔵野美術大学在学中に写真と出会う。その後渡英し The London College of Communication でさらに修習を重ねる。グラフィック、ライフスタイル、ファッション、ポートレートにおける彼のタイムレスな写真作品に目を留めた雑誌『i-D』から依頼を受けたことを機に注目度が高まり、現在では
Nigh Magazine