Romina Malta
 


 そして、私が最も守りたいのは、直感的なひらめきです。ふとした瞬間に現れる、「これはなにか本質的なものを含んでいる」と感じられるようなアイデア。だけど、あまりに早く編集されたり、修正されたり、説明されたりすると、そこに宿っていた生命力のような輝きが失われてしまう。だから私は、その最初の衝動を守るようにしています。まだきちんと考え抜かれていない段階にこそ、作品の強度が宿っていることもありますから。
「孤独が創造性のトリガーになる」とどこかで話していましたが、創作に入っていくための日々のリズムや習慣があれば教えてください。
孤独は、私にとっての出発点です。ここで言う「孤独」とは、単にひとりでいることではなく、他の何ものにも意識を向けない、特別な心の状態に入ることを意味します。心の中が  “空いている”  という感覚です。それは、世界が動き始める前の早朝に訪れることもあれば、音楽を聴いた後や、スタジオを片づけている最中に、ふとそういう状態に入ることもあります。特定の習慣はありませんが、繰り返し現れる所作は自然と身についているようです。たとえば、ものを動かしたり、思いついたフレーズをメモしたり、数分間なにかをじっと見つめたり……。そういう  “無意識的な準備”  に、その後に続くすべてが支えられているような感覚があります。
制作を始めるとき、何が起点になることが多いですか。
制作の入り口は毎回違います。たとえば、基本的なかたち、詩、ひとつの言葉、頭に残っているイメージ、あるいは身体的な感覚など、単純なものから始まることもあります。身近なものが起点になる場合が多いですね。置き間違えられたもの、光の向き、繰り返される音、誰かが何気なく口にした言葉、あと、夢がきっかけになることもあって、夜中に夢から覚めて急いで書き留めることもあって。だけど、明確なアイデアがなくても、制作を始めることはできます。何も期待せずに、「どうなるかな」と、紙や iPad、パソコンをただ眺めているだけで十分なこともあります。よく頼りにする要素としては、線と角度、初歩的なフォルムなど、基本的な幾何学形状です。そこから、何が起こるかを探っていく。完全に閉じることなく、広がっていったり方向を変えたりできるような、シンプルな構造に惹かれますね。それから、ニュートラルなフォントを出発点に用いることもあります。ナラティヴの重みがなく、開かれた状態を保てるから。私が求めているのは、何かを早々に固定せず、ある程度の方向性だけを示してくれるような  “はじまり”  です。
 そして、制作プロセスの初期段階を守ることも大切にしています。あるアイデアが、ほとんど偶然のように、強い力を持って現れるときがあるんです。そうしたアイデアは、深く考えすぎたり、素早く編集したりすると、エネルギーが失われてしまう。そう感じるときには、すぐには手を加えずに、少し距離を置いて見守り、あとで整える余地を残しておきます。