Romina Malta





これまでの変遷を振り返り、自身にとってターニングポイントとなったプロジェクトを教えてください。
私にとって転機となったのは、初めての本『Am I Awake or Am I Dreaming?』を出版したこと。「明晰夢(夢だとわかっている状態で見る夢)をイメージ化した作品集」という内容だけでなく、その制作過程すべてが大きな意味を持っていました。仲介を挟まずに一人で作業し、編集上の決定をすべて自分で下し、ひとつのアイデアを長く手元に抱え続けて、外部の期待に合わせて調整することなく形にする。そうした経験そのものが、すごく重要でした。
 それまでの仕事の大半は、コミッションワークやコラボレーションでした。この本は初めて、ヴィジュアルとナラティヴ、そしてパーソナルな要素を、説明せずにひとつに溶け合わせることのできた場でした。そこから、私がどんな言語を築きたいのか、そしてその言語が姿を現すために必要な自由のあり方を理解できた気がする。そして、本というかたちで世に出た今、それはもう完全に自分のものではないように感じます。まるで他の誰かが作ったもののように思えて、だからこそ手放すこともできる。そういう意味で、この本は成果というよりも、ひとつのサイクルの終わり、そして静かに始まる新たなサイクルの予感でもあるんです。