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Updata: 17th March 2021

Interview about
On Hannah Arendt:

Eight Proposals
for
Exhibition
at
Richard Saltoun Gallery,
London
with
Richard Saltoun
Richard Saltoun Gallery









Hannah Arendt

 ロンドンの Dover Street に拠点を構える Richard Saltoun Gallery は、2012年の開設以来、重要視されるべきなのに過小評価を受けるアーティストの作品を再発見することに注力し、同時に、不平等やアイデンティティに関する困難な問題に光を当てようと努めてきたギャラリーだ。特に1970年代以降のフェミニストやコンセプチュアルアーティストに対する彼らの真摯な献身は、必然的にそのプログラムに政治的焦点を強く植え付け、また、それらのプログラムによって社会問題に深く取り組む同ギャラリー独自の姿勢が極めて明確に示されることに繋がっている。

 アートの世界に今も存続するジェンダーの不平等を取り上げた『100%Women』は、ギャラリーでの展覧会に加えてアートフェアやデジタルプレゼンテーション、パブリックトーク、イベントという多角的な構成を取り、2019年 3 月から 1 年間に渡って実施された。そして、それに続くプログラムとして現在開催中の『On Hannah Arendt: Eight Proposals for Exhibition』では、現代において最も切迫した社会政治的な問題と向き合うべく、戦後世代の最重要な思想家の一人である Hannah Arendt と、1968年に最終版が出版された Arendt の著書『過去と未来の間』に焦点を当てている。書内のアイデアを提案、解釈、推定、解明する国際的な20組のアーティストをフィーチャーし、同書を構成する「伝統と近代」「歴史の概念」「権威とは何か」「自由とは何か」「教育の危機」「文化の危機」「真理と政治」「宇宙空間の征服と人間の身の丈」という章の ‘問い’ を探求する 8 つの展覧会を中心に、今年12月31日まで順次開催される。ちなみに『100%Women』や『On Hannah Arendt』のように、商業ギャラリーが 1 年間という長いスパンをかけて単一のテーマに取り組むこと、また、ギャラリー所属以外のアーティストと協力することは極めて稀だ。

 そこでここでは Richard Saltoun Gallery の代表である Richard Saltoun へ話を聞いた。






On Hannah Arendt:
‘The Modern Age’
11 January—26 February 2021

Insatllation view

Interview with
Richard Saltoun





Richard Saltoun Gallery では開設以来、過小評価を受けるアーティストを取り上げることに尽力していますが、そうしたギャラリーの姿勢が確立した背景には現在のアート界に対する何かしらの懸念があったのでしょうか?
いいえ、そうしたアーティストの支援は我々の活動の中心であり、我々の側に懸念はありません。見過ごされてきたアーティストを美術史の正当な位置付けで発見し学ぶことで、コレクターやアーティスト、キュレーターといったより幅広いアートの分野で恩恵を受けています。
重要であるのに認知されていないアーティストが見過ごされてきた主な理由は何であると捉えていますか?
我々が協力するそうしたアーティストの多くは女性であり、制度的偏見や構造的障壁、ジェンダーの不平等など、現在ではよく知られるあらゆる理由で美術史から排除されてきました。また、アート市場も大きな役割を担っており、新たな創作方法を拓き、もしくはコンセプトに基づく創作へ挑むアーティストの作品は必ずしも売れ行きが良くないため、その多くが見過ごされているのです。






100% Women
1 March 2019—1 March 2020

‘Matrescence’
15 November―21 December 2019
Insatllation view
Photo by Karen Bengall
Rose English
Study for a Divertissement
1973
Penny Slinger
Penny as Red Dakini
Photo by Mayotte Magnus
1977



この『On Hannah Arendt』において、実際にギャラリーを訪れることができなくともオンラインで体験/参加できるプログラムについて具体的に教えてください。
4 月にはイギリスでのロックダウンが解除されて人々がまたギャラリーを訪れてくれることを期待しています。しかしそれまで我々は広範囲に及ぶデジタルコンテンツの開発に取り組みます。まず、バード大学の Hannah Arendt Center と協力してヴァーチャルの読書グループを開催しており、ここでは我々の展覧会プログラムの 8 つのショーに基づき、1968年発行の Arendt による著書『過去と未来の間』の各章についてディスカッションを行ないます。次回は「歴史の概念」についてのセッションで 3 月10日に開催されます。さらに、オンラインでは Hannah Arendt Center の創設者兼ディレクターである Roger Berkowitz による Arendt のエッセイの紹介や、Roger と参加アーティストのインタビューをご覧いただけます。また、ブラジル出身の音楽プロデューサー兼サウンドアーティストの Laima Leyton によるサウンド作品を紹介するオンライン展覧会も開催しています。加えて、世界中でも展示を鑑賞できるよう、展覧会のガイド付きのウォークスルー動画も設置しています。

 
On Hannah Arendt:
‘The Modern Age’
11 January—26 February 2021
Virtual Tour


『100%Women』や『On Hannah Arendt』のように、単一のテーマを 1 年間という長い期間をかけて取り上げることで達成できる領域は何でしょうか?
特定のテーマに基づいてプログラムを開発することで、現在の世界において非常に重要な、社会的かつ批評的な意識を抱くという我々の野心を表明し、示す機会を得ることができます。
今回のプログラムでは Laima Leyton が各章に対する音楽作品を制作しています。音楽がアートプログラムにもたらす可能性について見解を聞かせてください。
音楽とサウンドは感覚的な体験であり、 3D アートフォームによる視覚的な関わりを超えたものです。 Laima は以前、母性を探求した展覧会の際にギャラリーで素晴らしいパフォーマンスを披露してくれて、大変好評でした。彼女とまた仕事を共にすることができてとても嬉しく思っています。
この数年で社会問題への関心や意識が世界的に高まり、パンデミックを受けてその傾向は一層強くなってきていると感じます。そうした状況下でアートやそれに関わる者にできることは何だと捉えていますか?
パンデミックによってもたらされた状況は、 Hannah Arendt とまさしく同じように、‘考えること’ や ‘行動すること’ を私たちに促します。アートは必然的にも切迫した社会問題を浮き彫りにしますが、行動を起こすか否かは我々次第なのです。「私たちは自由に世界を変え、そこで新しいことを始めることもできる」という Arendt の言葉どおりです。









On Hannah Arendt:
‘The Concept of History’ - Peter Kennard
8 March―10 April 2021

Peter Kennard
Stop 7 
Oil and ink on canvas
101 × 151.5 cm
1968 - 76

Peter Kennard
Pallet
Oil, charcoal and dust on wood
90 × 65 × 14 cm
1990
Peter Kennard
Untitled 3 (2020)
Acrylic, charcoal, graphite, carbon toner, pastel on paper
111.5 × 76 cm
2020



 本誌 Issue 1 の取材において「創造性とアートメイキングを融合すれば行動を促す手段になるのではないか」とアーティストの Emma Kohlmann は語り、「利他的な要素のないものには奇妙さを感じる」とキュレーターの Francesca Gavin は述べていた。アートに関わる個人はもとより、アート界の総体的な意識についても「美の追求」だけではない方向へ向かっていることを、今回を含めた最近の取材でひしひしと感じている。

 さて、Saltoun のインタビューにもあるように、この『On Hannah Arendt』には Issue 1 で取材したサウンドアーティストの Laima Leyton も参加している。そこで次回の記事では、 Leyton がこのプロジェクトに寄せたサウンド作品と共に彼女へのショートインタビューを紹介したい。











Richard Saltoun Gallery
41 Dover Street
London W1S 4NS
United Kingdo
richardsaltoun.com

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