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Update: 26th March 2021

Interview about
On Hannah Arendt:

Eight Proposals
for
Exhibition
at
Richard Saltoun Gallery,
London
with
Laima Leyton



 









 前回の記事で紹介した Richard Saltoun Gallery で開催中の『On Hannah Arendt: Eight Proposals for Exhibition』には、本誌の Issue 1 で取材したサウンドアーティスト兼音楽プロデューサーの Laima Leyton も参加している。このプロジェクトにおいて彼女は「時間」「文化」「真実」「精神性」をテーマに、総じて『無限の過去、無限の未来、そして、今』と題したサウンド作品を Arendt の著書『過去と未来の間』の各章に沿って制作するという。そのうち第 1 章の「伝統と近代」からインスピレーションを得た『Lack of』はすでに発表されており、この作品について Leyton は「疑念と不信に基づいた科学は真実を揺るがすという考えから着想を得た夢想的かつ瞑想的な作品です。‘伝統の欠如’ および’真実の欠如’の損益を熟考し、最終的には真実は私たち一人一人の内にあるのだということを『Lack of』では示唆しています」と述べている。そして、それに続く第 2 章「歴史の概念」へ寄せた『Amnesia』が 3 月 8 日に発表されたばかりだ。

 そこで、Richard Saltoun への取材に続いて、ここでは Leyton によるこれら 2 つの作品を紹介すると共に彼女へのショートインタビューをお届けしよう。





Lack of
Music, filmed & edited by Laima Leyton
2021


Interview with
Laima Leyton






今回のように何らかの著作に基づくサウンド作品の制作はこれまでに経験がありましたか?
特定の著作のコレクションから直接的にインスピレーションを得たのはこれが初めてです。他の方の作品に応じることは非常にユニークな機会になりましたし、とても協力的で支えられているような感覚です。
Chapter1 から Chapter7 まで続くこのシリーズは、あなたにとってはアルバムのような感覚なのでしょうか?
これをアルバムとして捉えることもできますが、通常のアルバム以上に創作に時間を要するので、全く異なるとも言えます。著作からサウンド作品に取り入れたいものを選出する以前に、 1 ヶ月ほどかけて各章との調和を試みているのですから。
今回の一連の作品制作は通常とは異なるアプローチだったと思いますが、具体的にどのようなアプローチを取っていますか?
Hannah Arendt の著書からインスピレーションを得ると同時に、彼女がこれを書いた時の世界で何が起きていたのかという背景からも触発されました。私は彼女の著作を私たちの時代に置き換えて翻訳しています。そのため、彼女が言及する時代や空間の音や画像を探して、それらを新たな手法で作品に取り込んでいます。これまでの作品では主に個人的な経験から着想していたので、これは私にとって初めての進め方。個人的な経験を通じて他者の思考と巡り合うという方法です。
第 2 章「歴史と概念」へのサウンド作品についてのテーマやコンセプトを教えてください。
Arendt は「歴史の概念」において現代史を人類によって定義されたプロセスであると書いています。そこでは、男性は自然や歴史の流れを自在に操ることができます。そして、歴史を代表する男たちと忘れ去られた人たちを回顧して『Amnesia』を創作しました。






Amnesia
Music, filmed & edited by Laima Leyton
2021


社会問題を積極的に取り上げるなどRichard Saltoun Galleryには独自の姿勢がありますが、あなたが最も彼らに共感する点を教えてください。
確かに私は積極的な関与を好みます。芸術は主に社会での出来事への反応なので、社会的関与を称えるアートギャラリーが早急に必要とされています。私が最も共感を抱くのは彼らの寛容さ、実験的な試み、新しいことに挑戦する姿勢です。それが、有名無名を問わず多くのアーティストと共に素晴らしい作品を生みだす結果に繋がっているのではないでしょうか。








  驚くことに、これらの作品は音楽だけでなく映像についても撮影や編集に至るまで Leyton 自身が手がけているという。自宅のリビングルームで創作したのだと取材後のメールで彼女が打ち明けてくれた。『Lack of』『Amnesia』に続く 6 作品も各展覧会の開催に合わせて今後順次発表される予定だ。知識や技術に加えて深い感受性を持つ彼女の音と映像による新たな解釈を楽しみに待ちたい。



Richard Saltoun Gallery
41 Dover Street
London W1S 4NS
United Kingdo
richardsaltoun.com







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