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Update: 31th March 2022



Interview with


Madalyn Merkey

about Puzzle Music




 
 Issue 3 で取材に応じてくれた Madalyn Merkey が 2 月に新しいアルバムをリリースした。『Puzzle Music』と題された本作では、その名のとおり、彼女が自身で奏でたあらゆる音の断片をパズルのように繋ぎ合わせているという。今回はこのアルバムの制作背景に加えてスリーヴのアートワーク、さらにモジュラーシンセの魅力について尋ねてみた。




Puzzle Music
Madalyn Merkey
2022

Artwork by Casey Leung
Vinyl mastered and lacquer cut by Kassian Troyer @ Dubplates and Mastering, Berlin.
Mana Records



新しいアルバム『Puzzle Music』がリリースされましたが、このアルバムの制作はいつ頃から始めたのですか。また、どのような感情やアプローチで臨んだのでしょうか?
2019年の 8 月、カリフォルニア州オークラインドにある自宅のアパートで制作を開始しました。2012年から主にコンピュータミュージックに注力してきたけれど、このアルバムではアナログによる実践の再構築を試みようと、機材をクローゼットから引っ張り出しました。「手段を選ばずに音楽を作る」という気持ちで臨んだ部分もあって、「動き続けなければ」というような内面の感情が原動力となったアルバムのように感じます。創作における感情は本質的な反応を呼び覚ますのです。比喩的な表現になりますが、このアルバムでは機械時計を視覚的な題材として思い描いていました。異なる速度で回転する歯車やバネが連動して 1 つの外的機能を達成するために作用するようなイメージです。
それぞれの楽曲はアルバムに収録することを念頭に作られたのですか? アルバムという形態を前提に、楽曲の構成やバランスはどのように考慮しましたか?
それぞれの音を演奏し、それらを徐々に小さく弱めていって、隣接する要素を取り入れていくという一貫したプロセスで、 1 年間に12曲ほど作りました。歯車の歯が噛み合うように、連動して動く音を見いだそうと試みたのです。最後の曲『Puzzle Music』はこの手法が最も素直に表現された楽曲ですね。その他の収録曲のうち 2 曲はメロディと反転で構成され、 1 曲はフィルターをかけたノイズスイープ、 1 曲はゆったりとしたパッセージを突然中断する句読点のようなトーンで構成されています。短い持続時間と長い持続時間のモード間の対話が、全てを繋ぐ主要な焦点として必要でした。
以前のインタビューで、この作品はあなたの初アルバム『Scent』と同じく、アナログシステムに回帰したものになるはずだと述べていましたが、以前共有していただいた写真にあったあのモジュラーシンセを活用したのでしょうか? モジュラーシンセによる表現の醍醐味を教えてください。
モジュラーシンセを自宅で使い始めたのは『Scent』が完成した後です。Mills College に在学中だった2012年頃、 Maggi Payne から Moog IIIP の使い方を教わり、その魅力に取り憑かれました。 Maggi は私がこれまで一緒に過ごした中で最も素晴らしい教授でありミュージシャンの一人です。 Mills 在学中は機会を見つけては Moog Studio で過ごしていたので、このシステムと Maggi との作業はとても素敵な思い出として残っています。
 モジュラーシンセは、思いついたアイデアを即座にスケッチするのに適したツール。ノイズにフィルターをかけたり、ビートを打ち出すノコギリ波を瞬時に作りだせて、とても気持ちがいいんです。特に私は、シンプルな構造でありながらも難解な制約のあるモジュールに惹かれます。そのシンプルさゆえに、自分の欲望をじっくりと検討することができるから。また、ケーブルを繋ぐことで得られる永続性の欠如も楽しんでいます。 1 日の終わりに今やっていることを放棄して、次のことに新たに取り掛かるのは、心が和らぐような感覚です。








このアルバム制作を通して追求したことを教えてください。
作りだした音によって安らぎと孤独を見いだし、そしてそれを有機的に実現するための時間を確保したり、また、実験的な作業を通して反復構造の融合とコントラストを追求したり。個人的にこのアルバムでは、日頃からクリエイティヴな時間を設けることをテーマにしていました。
スリーヴのアートワークも印象的ですが、誰が手がけたのですか?
今回のスリーヴはデザイナーの Casey Leung と共に取り組みました。彼女に楽曲を聴いてもらったところ、私が過去に手がけたフラットなイメージのカバーアートを参考に、 1 曲 1 曲を視覚化したスケッチを作ってきてくれました。当初のアイデアでは、時計の心臓部を構成するパーツの“ヒゲゼンマイ”の機械設計図を再現しようと考えたのですが、その後、専門用語を取り除いて、ヒゲゼンマイを単体でジャケットに採用することにしました。
 私のイメージやカラーパレットが字義の解釈に偏りすぎないよう、 Casey と、 Mana Records の Matt と Andrea が手助けしてくれました。彼らと共に仕事をしたからこそ音楽の持つ雰囲気をよりよく捉えて表現することができたのだと思います。 Casey は香港やサンフランシスコの街角で日差しに照らされ迷子になった物体を撮影しているのですが 9.cleung、私はその写真の大ファン。彼女の芸術的感性と聴く力がこのアルバムのヴィジュアルランゲージを有意義な形で前進させてくれました。



Visualizations for each song

A-1. Pinion
A-2. Pallet fork
A-3. Hairspring
B-1. Clutch
B-2. Click
B-3. Escape wheel
B-43. Puzzle music


VR sounds visualizer installation
Sound: Escape Wheel from Puzzle Music by Madalyn Merkey





今後予定しているライヴやオンラインパフォーマンスはありますか?
 3 月30日にニューヨークの Ergot Records でのライヴを予定していて、その演奏は同日夜の 7 時から 9 時にかけて Montez Press Radio で放送されます。また、 4 月28日にはスタンフォード大学の CCRMA で演奏する予定で、これもウェブサイトで配信されると思います。その合間を縫ってオーストラリア旅行に駆り出されるので、急なことですが、滞在中に少なくても 1 回はライヴをしたいと考えています。





インタビューで述べられたとおり、このアルバムの制作で彼女が取ったプロセスは、それぞれに異なる形や表情や動きを持つ音のパーツを繊細に結び重ねていくという実験的なものだ。にもかかわらず、その多彩な音色は優しく不思議な空間を形成して、聴く人の気分や波長によって思い描くイメージが万華鏡のように変容するほど、有機的でフレキシブルな包容力を備えている。この作品のような音楽に浸って心を解放できた時、和やかなノスタルジアや新たな感情に出会うことができるのかもしれない。音楽の持つ自由な力を感じさせてくれるアルバムだ。






Madalyn Merkey: Puzzle Music
2022
Mana Records
Bandcamp

Madalyn Merkey
@oliveoyl8




Nigh Magazine Issue 3:
Interview 4: Madalyn Merkey




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