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Front de Cadeaux


ハイテンポが最高潮に達したダンスフロアは正直苦手だ。それはもう音楽と交わるというよりも、急き立てられる感覚に近くて、決して楽しいものではない。とはいえ、テンポが速まれば容易に盛り上がる近頃の傾向は否めず、目に見えるリアクションを求めて加速に頼る DJ がいても致しかたないのだが、大抵そこにグルーヴは感じられない。
 対して、Front de Cadeaux の音楽はグルーヴに満ちている。名もないスクワットであれ、最高峰のレイヴであれ、 DJ ブースに立つ彼らの姿勢にブレはなく、むやみにフロアを煽ることをしない。 45rpm のレコードを全て 33rpm に落としてプレイする彼らは、超高速 bpm の短絡的な潮流を逆手に取り、無類の手腕で至極のグルーヴへと変貌させる。さらに 2 人の Back to Back による駆け引きが変幻自在な展開を作り、音楽だけに許された快楽の世界への扉を開放する。彼らの DJ に心地よく揺れるフロアや悦楽に浸る人々の表情を見れば、「身体はテンポではなくグルーヴに従う」という彼らの言葉が自然律であることは明らかだ。