Kiki Kudo





お料理はもちろん、皆さんが美味しそうに召し上がっている姿もすごくリアルで、音楽やグラフィックも含めて素敵でした。このアイデアはどのように生まれたのですか?
以前からクッキングショーを作ろうって Brian とはよく話していたんです。2016年にキッチンも大きい今のロフトに越してきてから料理を作る機会がさらに増えて、友だちを呼んでジャムセッションをして、終わった後は私の作ったご飯をみんなで食べる、そんなホームパーティをよくやっていたので、それを映像に収めたら面白そうだなって。『Grand Street Milki』に映っているような雰囲気です。昨年(2019年)は少しパーティをお休みしていたのですが、フィルムメーカーの Woods やアーティストの Grave など若い子たちと仲良くなったこともあって、じゃあ一緒にクッキングショーを作ろうってことで、2020年 1 月に撮影したのがあのパイロット版です。まさにパーティを撮影した感じで、通常のクッキングショーのように構成案や台本があったわけではなく、料理完成までのプロセスを順に追って撮影したわけでもないので、編集作業はかなり苦労したようで……。今思えば撮影プロデューサー的な役割が必要でしたね(笑)。でも、最終的にうまくまとまってよかったです。実は同シリーズでもう 1 作あって、それは私が一人で淡々と料理をしている動画。また「Positive Messages」で公開させてもらおうかな。
それはぜひ拝見したい。そもそもお料理を本格的に始めたきっかけは何だったのですか?
NY に来てから自分で料理を作らざるを得なくなったという単純な理由です。その頃のルームメイトが日本人や日本食が大好きなアーティストで、簡単な日本食を作ってあげると喜ばれたので、それから徐々に。日本食は根強い人気でみんな大好きなのですが、どのお店も安くはないし、日本食だと自分でもなんとなく近づけることもできるので、家で作ることが多いです。周りの友だちからも日本食ベースの簡単な料理を作ると、今まで食べていた日本食はなんだったのか」って驚かれたり、すごく喜ばれる。手巻き寿司を初めてやった時は、 Brian も「まさか家で寿司を食べられる日が来るなんて」って感動してた(笑)。どんなことでもそうですけど、誰かのために作ったり、誰かとシェアすることを考えて作るのはモチベーションになります。反応を聞けたり、次はこれを食べさせてみたいなって考えたり。だから、料理にはまった最大の要因は Brian と付き合うようになったことですかね。
お料理で失敗することはないですか?
失敗なんて考えたことがなかった。シンプルな料理しか作らないから失敗しようがないのかも。ただ、食材を洗ったら水をよく切るとか、フライパンはきちんと温めてからとか、お酒や生姜を使うと絶対に美味しくなるとか、基本的なことだけど料理を続けていると失敗しないための方法が身についてくる気がします。それは経験というか小さな積み重ねですね。
レシピはどのように考案しているのですか?
例えば、私はお肉を食べないのでプロテインを摂取するためにお豆を積極的に取り入れているけど、一方で Brian はお豆があまり好きじゃない。そうした環境で、 2 人一緒に同じ料理を美味しく食べるにはどんなものがいいだろうとか、そんなことを考えながら実験みたいに試していて。ロックダウンの期間にはレンズ豆を発芽させてピクルスにしました。発芽させることで毒素が抜けるらしく、 Brian も酸っぱいものが好きなので食べてくれるし。あと、今制作中のクッキングブックには46点のレシピを掲載する予定で、それは46人の友だちひとりひとりに向けたレシピ。この人にはこんな料理がいいかな」って。私の場合、そんなふうに日常生活の延長でレシピが生まれるのかもしれない。とにかく Easy Going なんですよね。それは料理に限ったことではないですけど。
そのクッキングブックも拝見してみたいですが、進捗はいかがですか?
レシピや原稿は仕上がっているので、完成に近い状況です。友人で NY 在住のフォトグラファー Naoko Maeda さんが撮影してくれた料理の写真と、 Brian の CG をコラージュした画像を使おうと考えていて、それも半分以上はできています。興味のある出版社さんを募集中です!
Kiki さんと Brian さんの共作は 2 人それぞれのセンスが気持ちよく組み合わさった独特の雰囲気が素敵ですよね。
あはは、それは嬉しいです。 Brian はとにかく勉強熱心でエナジー溢れるクリエイティヴの塊のような人。その探究心には日々リスペクトしています。コマーシャルの仕事もたくさんしているけれど、その合間に音楽や映像など毎日何かしら作っている。しかも、作るのが非常に早い。もうみんなが引いちゃうくらい早い(笑)
ところで、コロナによる自粛期間中はどのように過ごしていましたか?
振り返ってみるといろいろやりましたね。先ほど話したレンズ豆の発芽や、マッシュルームも栽培しました。