その長野のプライベートスタジオはいつ頃から?
長野に戻ってきたのが前述の『homely』のあたりなので、11年前になりますね。デモ制作と普段の練習はこのスタジオで、レコーディングはピースミュージックという東京のスタジオでやっています。
メンバー全員が長野在住なのでしょうか?
ドラムの勝浦さんは東京に住んでいて、僕を含めた他 3 人が長野在住です。ただ、同じ長野県とはいえ 3 人散り散りで、別々の地域で暮らしています。
OGRE の音楽はバンド独自の生々しさに加えて電子音のトラックのような感触も持ち合わせていて、どんなアプローチで作っているのか興味があるのですが、バンドとしての制作はどのように進行しているのですか?
基本的にはギターの馬渕と僕が各自でデモを作って、それを持ち寄り、スタジオに集まった時にそのデモを土台にみんなで演奏してみる。そこからバンド練習やスタジオ作業の過程でアレンジが変わっていきます。
レコーディングに入る段階で楽曲のディテールはどの程度固まっているのでしょうか?
ほぼ固まっているものもあれば、ほとんど何も決まってないものをレコーディングしながら詰めていく感じのものもあります。曲によってまちまちです。
デモとはいえ全ての楽器パートを一人で作っているということは、究極的に言えば、自分一人で作れるわけですよね。それでもやはりバンドでやる、その意義はどこにあると思いますか?
自分には思いつかないようなアイデアがメンバーの中から出てくることがあるっていうのもありますが、単純にデモの打ち込みのパートを生の楽器に変えるだけで、少しリズムが揺れ、 1 音 1 音の強弱や質感も変わり、全体の印象もかなり変わります。そういったことによって一人で作るよりも良い効果が生まれていると思っています。
楽曲を制作しながら、その音楽を聴く人がどんなイメージを抱くのか思い描くことはありますか?
「人がどう思うか」ということよりも、まずは「自分がどう思うか」で作っている気がします。その後、完成した曲を他人がどう思うかというのは聞いてみたくなりますが、制作中はあまり気にしていないと思います。メンバー間で制作中にどんなイメージを持っているかを話すこともたまにありますが、「これだとタヌキが腹叩いて踊っているみたいだから、もうちょっと変えよう」とか、かなりしょうもない感じのコミュニケーションです。
では、制作時からライヴでの演奏を意識することはありますか?
ここ何年かは作曲やレコーディングの時はライヴを想定しないようにしています。ライヴを前提に作ってしまうとアレンジの幅が狭まってしまうと思うので。まずはライヴのことは考えずに、いろんなアイデアを積極的に取り入れていきたいなと。それをどうアレンジしてパフォーマンスするかを考えるのはライヴの直前になってからです。
レコーディングとライヴパフォーマンスは全く異なる表現として捉えていますか?
やっていること自体は全く違うというわけではありませんが、やっている側の体感としてはかなり違うと思います。レコーディングは、当然ですがお客さんもいないですし、その後評価されるかもわからないことをコツコツと地道に取り組む地味な作業。それに対してライヴでは、その場で出す音に目の前のお客さんが反応してくれるので、やりがいや高揚感のようなものがわかりやすくあります。こうした異なる場があるのは、差しあたり自分としては良いことだと感じています。