Martine Syms



コロナ渦でプロジェクトを進行することに困難はなかったですか? 
普段は 1 年の大半を展覧会やショーのために旅行していて、 LA に数ヶ月以上滞在することはほとんどありません。だから、こんなにも長い期間を LA に一人で留まっていることが精神的にも体力的にも最も過酷ですね。アパートメントに閉じ込められたような状態ですから。
その困難をどのように克服したのですか?
散歩やランニングをたくさんして、ギターを弾き、誰かに連絡を取り、スタジオへ足を運ぶなど、通常のルーティンのように平常を保とうと心がけました。そして、この状況は長引いたとしても永遠には続かないことを 1 日の終わりに自分へ言い聞かせます。また、現実を見つめ、今に意識を集中するよう努めていて、それには瞑想がとても役立ちます。
こうした状況下においてモチベーションとなっているものは何ですか?
アートにおいても人生においても、自分は長い間ここでやってきたのだと改めて認識することです。そうすることで自分に対して優しく穏やかでいられるし、やりたいことや創作意欲のバランスを維持しやすくなります。
今回のパンデミックによる世界の変容は、自分の創作がさらに進化するための転換点になり得ると思いますか?
間違いなくそうなると思います。物事に対する考え方や仕事の取り組み方、習慣など、私にとってのあらゆることがすでに変化しました。その多くは個人的なことですが、一方で、地域や世界との繋がり、また、物事の広がり方にも関係しています。全般的に私の作品は現在起きていることのダイアログをベースにしていて、それらに対する敏感な反応の表れなのです。そして、そこにはとても厳しい真の社会生活があります。
特にクリエイティヴに関して、今後の世界はどのように変化していくと思いますか?
私自身が隔離期間中に瞑想の段階、執筆の段階、休息の段階など、いくつもの段階を移行してきたことを考えると、この問いに答えるのは難しいですね。ただ、どんな時でも変化する可能性があるという事実が、現実の大部分を占めているように感じます。どこかへ出かける必要があろうと、何かを作る必要があろうと、完全にリラックスした状態で宇宙を見つめる必要を感じたとしても、変化はいつでも起こり得るのです。今回のことで私たちの仕事やクリエイティヴィティとの関係性は大きく変わり、さらに、相対的にそれとどう馴染んでいくのか、また、最も重要なこととして、アーティストにとってサステイナブルとは何であるのか、そうしたことが今まさに変化しているのだと思います。
読者に対して、未来へ向けたポジティヴなメッセージをいただけますか?
全てに希望の兆しを見いだせなくても問題ありません。それで大丈夫です。