昨年から「行動制限」「活動自粛」という言葉が多用されているが、それを課せられることが、実際、人間にとってどれほど窮屈なことか。彼女のように精力的なアーティストにとっては尚更だろう。ヴィジュアルカルチャーにおける Blackness の描写の考察を基軸に、映像やパフォーマンスにテクノロジーを掛け合わせたマルチメディア・インスタレーションを世界各国で展示している Martine Syms。彼女は2020年に発表したあらゆる形態の作品をこの難局のリマインダー及び考証として共有してくれたが、パンデミック以降の日々を飾らずに語ってくれたこのインタビューもまた、特別な時期の率直な記録として残るのではないだろうか。加えて、「Positive Messages」に寄せた69曲に渡るプレイリストやここで挙げてくれた愛読書からは、どんなプロフィールよりも生身の彼女が伝わってきて、単なる記録以上の感覚的な記憶が共有できるように思う。