Kiki Kudo





NY の現状はどのような感じですか?
 NY のロックダウンは解除されたままですが、アメリカ全体では感染者が増えていて、再ロックダウンしている州も増えてきました。 NY では雨が降っても傘を差さないような人がたくさんいますが、そんな人たちもみんなマスクをしていて、かなり深刻に捉えているようです。それは自分のためというよりも他人のため、コミュニティとしての意識が動かしていると思います。ただ、このパンデミックでストリートでベギングしている人やホームレスがすごく増えたし、街はかなり痛々しいです。
では、パーティやイベントなどは全く?
ないですね。アウンダーグラウンドではたまにあるのかな。私も誘っていただいたことがありましたが、まだ少し早いなってお断りしてしまいました。みんな結構ちゃんと自粛して、その時が来るのを待っている感じです。アメリカは感染の規模が大きいし、友だちのお母さんが亡くなったり、実際にコロナにかかった友人からはすごく辛かったと聞くので、日本に比べるとコロナの猛威を身近に感じているのだと思います。
日本への郷愁は抱きませんか?
はっきり言って全くないです(笑)。たまにお母さんのご飯を食べてみたいなって思ったり、最高の居酒屋に行ってみたいなとか、友だちにも会いたいなとも思いますが……、やっぱり自由度が違うと思います。もうすぐ10年経ってしまうけど、 NY へ来てからは、他人の中にいた自分から解放されたような、ずっとそんな気分です。もう自分のことだけを考えて、音楽でも料理でもやりたいことを好きなようにチャレンジできるし、それをジャッジされることもない。日本は Instagram で様子を伺うくらいで十分かな。 NY はさまざまな背景の人が多いので、まとまりもないけど、縛りもない。大都市とはいえ NY のほうが案外のんびりしていて、メンタルも食生活もヘルシーな生活ができるような気がします。日本の美徳的な職人芸や細部へのこだわりはリスペクトするけど、細かいディテールで人を判断したり、他人との差を気にしたり、そこに執着しすぎたり……。もう思い出さなくてもオッケーなことなんてたくさんあるし。みんなたくさんの人生があって、私も細かいことにこだわらなくなって、心身共に落ち着いていられます(笑)
パンデミックによる世界の変容は、自身の創作がさらに進化するための転換点になり得ると思いますか?
パンデミックが始まってから生活そのものがシンプルになったので、自分や世界を見つめ直すことができたり、実験したいことが生まれたり、パターンを作っては壊して、自分の中での新世界に飛び込んだ感じがしています……、といった感覚を世界中の人が同時に体感していると思う共同体験、パンデミックの時代のグローバリゼーション……。
特にクリエイティヴに関して、今後の世界はどのように変化していくと思いますか?
もっともっとクリエイティヴになると思います。
どうしてそう思われるのでしょう?
社会があまり機能していないので「自分でやるしかない」「何か新しいことにトライする」って気分になるのだと思います。今はみんな家にいるし行動範囲が狭いので、想像で羽ばたくしかないというか。周りに料理を始めた人も多くて、その面白さに気づいてしまった友だちもいるし、ニットやビーズでアクセサリー作りを始めた子もいて、それが結構楽しそう。クリエイティヴな気持ちに向かうってとにかく素晴らしいことだと思います。私もこの期間はこれまでにやっていなかったことに挑戦したし、いろいろと作ってみましたから。私だけに限らず、そういう意味で、みんなクリエイティヴになっていくんじゃないかと思っています。
読者に対して、未来へ向けたポジティヴなメッセージをいただけますか?
自分を困らせないで❤
パターンを創って、パターンを壊す