あなたの作る音楽には既存のフォーマットを超えた自由さを感じます。旋律やリズム、ビートや物語性など、音楽には多くの要素がありますが、創作の際にあなたが音楽の本質と見据えているものは何ですか?
私にとって音楽とは、開かれたものであり、ダイナミックで、流れるもの。そして、私が惹かれるのは、音楽には “時間” というひとつの次元しかないという事実です。だからこそ、音楽は非常に抽象的なものになります。音楽は目に見えないものですが、同時にとても効果的で、ダンスや仕事、エクササイズ、リラクゼーション、愛、祝福、哀悼など、あらゆることで人々に利用されています。私はただ聴くための音楽を作りたい。とはいえ、難しいですね。流体物理学ではよく知られた法則がたくさんありますが、気象学では人間への影響の全体像はどこか予測できないままですから。
一般的なダンスミュージックとは異なりますが、とはいえ、あなたの音楽にグルーヴを感じることがあります。あなたにとって「グルーヴ」とはどんな意味を持っていますか?
とても静的だったり安定していたり、また、画一的だったりすると、音楽は生気のないものに映ると思います。私はいつも、楽曲の中に少なくとも最小限の動きを設けていて、時にはゆっくりとしたパルス、時には “グルーヴ” を必要とします。音楽を表現する多くの用語と同じく、グルーヴは人によって解釈や捉え方が異なりますが、私にとってのグルーヴは、タイミング、ダイナミクス、音の組み合わせによる可変のパターンです。そして、それはあらゆる音に対応し、無限のパターンがあるからこそ、素晴らしい遊び場となるのです。適切なバランスと納得のいくパターンを見いだせれば、素晴らしくエキサイティングな作品やとても催眠的な作品を作ることができると思っています。
プロフィールにもありますが、活動当初からヴィジュアルと音楽の交流の可能性の探求を始め、2010年にはオーディオヴィジュアル作品『EXP』を発表しています。この探求によって得た個人的な見解、また、現在このために使用しているツールと、それを用いて試みていることを教えてください。
Walter Ruttmann や Oskar Fischinger が 100 年前にすでに行なっていたようなフィルムと音の実験に、ただ心惹かれたのです。つまり、音楽に視覚的な次元を加えるという可能性。うまくいけば、それは共感覚をもたらすことができます。とはいえ、聴覚は 2 番目に重要な感覚に過ぎず、視覚のほうが圧倒的に突出しているため、視覚的な要素をシンクロさせるバランスと同じように、オーディオと映像の間に適切なレベルを探りだすことが重要です。過ぎたるは及ばざるが如し、つまり、最小の及ぼすもののほうが効果的なことも多いのです。