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なるほど。立体化という視点で稲葉さんの作品を見返すと、確かに全てがユニークな立体物としてイメージできますね。
建築家やプロダクトデザイナーといった立体制作を本職とする人の多くは、設計当初から立体としてアプローチする。だけど、グラフィックは平面上、図面上ではもっと自由に作ることができる。僕が建築事務所と仕事をすると聞くと、大抵みんなはウェブやロゴ、名刺とかを作るのだとイメージするけど、そういう感覚ではなくて。 Instagram で公開した僕のいくつかの図版を見て立体をイメージする人がいるように、小さなアイデアでも拡張させていくことで、グラフィックの可能性は無限に広がっていくのだと思う。だから、あまりひとつの業界やカテゴリーに縛られないほうがいいんじゃないかな。
稲葉さんはもともと平面で考えているのですよね?
平面ですね。ただ、仙六屋のロゴ設計図が示すように、このようなデザインは機械設計の作り方をしているし、ドローイングをロゴに持ち込んだ例でもあって、いくつかをシンクロさせているよね。そして、その最終的なアウトプットはどんな方法がいいのかを考察する。つまり、ロゴを作る感覚というよりオブジェやインスタレーション、プロダクトを作っている感覚に近い。逆を言えば、今、 +81 Gallery Kyoto で展示している作品はプリントが多いけど、ここではプリントをプロットとして捉えているし、そういう作りをしている。
プロットアウトの手法を考えるのはやはり展示のタイミングですか?
作品を作っている過程で「これはあんなふうにプロットアウト?」と思えば、その時点で技術を調べて、実際見に行ったりもする。さっきの音楽の話に繋がるけど、会場や音響のことがわかっていないとチューニングができない。それに、作品の内容とプロットアウトが連動していないと、見る人の体感が違うような気がする。そうしたことを追求するのは興味深いです。
 +81 Gallery Kyoto での展覧会が話に出ましたが、久しぶりの展覧会ですよね。
NY でやった展覧会が 5、6 年前で、国内だと2012年の静岡での展覧会以来。だから今回の展示は僕にとって一種のリハビリみたいな感じ。とはいえ、その間もずっと「NEWLINE」に取り組んでいたし、ある程度のアイデアや作っているものも溜まってきている。ただ、それはまだ原案だから、アウトプットできるように描き加えて調整をして、今年中には改めてきちんと披露したいと思っています。
 +81 Gallery での展覧会で新作の発表は?
その新しい原案を少しだけ進展させたものを出展しています。正確にはこの 4 年くらい取り組んでいるシリーズで、「NEWLINE」が進化した、僕としてはもう「NEWLINE 3」でいいかと思っている作品もいくつか含まれている。それからさっきも少し話に出た「Black」というシリーズの原案と、ある写真家とのヴィジュアル文通を試みたんだけど、そこからも数点。それらをコンビニで出力したものを出展しています。