Nigh Magazine
Issue 4
Issue 4
Afterwords
以前私はグラフィックデザイナーを主な取材対象とするインタビュー誌に携わっていた。今号で取材した稲葉氏によるエディトリアルデザインを目にしたことが、その編集部を志望したきっかけのひとつだ。今回の記事でも触れているが、当時のグラフィックデザインは音楽やファッションを物語ったり象徴したり、それらと渾然一体になった作品や、作家の解釈や思案が際立つ作品が多く、そういったヴィジュアルカルチャーとしてのグラフィックデザインに私は心惹かれたのだ。
けれど、編集部に在籍した十数年の間にクリエイティヴシーンを囲む環境や潮流は当然ながら大きく変わった。グラフィックデザインに関しても同様で、ブランディングやストラテジーなどビジネスと交差する手法が本筋となっていった。それは至極自然な成り行きだったが、先に述べた経緯を辿った私には、そうしたデザインはどうにも味気ないものに感じられて、その場からフェイドアウトせざるを得なくなったのかもしれない。
グラフィックデザインはヴィジュアルランゲージだと誰かが言っていた。言葉では到達できない領域のコミュニケーションを可能にするツールなのだと。まさしく私もそう思う。だからこそ、同一認識の共有が前提となる標識やピクトグラムなどは別にして、こちらの嗜好や傾向を単純視した断定的なデザインには、正直げんなりしてしまう。そこからはそれ以上のコミュニケーションが生まれない。効率化の工程で省かれる余分なものにこそ好奇心や内省の種が隠されているのに、数値で表されるものが成果の全てとされるのなら、どれほど陳腐で白けた世界になってしまうだろう。
今回取材に応じてくれた 4 組は、ルーツも世代も、背景や変遷も万別で、グラフィックデザインに対する捉え方や取り組みもそれぞれに異なる。しかし彼らが作るものは、見る人が受動するだけでなく、感情に波紋を広げて余韻や反響や記憶を呼び起こす、交流することのできる作品だ。そうした人間らしい豊かなコミュニケーションを為せる作品はやはり、作者が課題と向き合い客観的視点に悩んだりしながらも、自らの内にあるものを汲み上げて生まれているとしか思えない。
デザインの分野が細分化し、それぞれの領域が曖昧になっている今、そういった作品をグラフィックデザインと呼んでいいのか私にはわからない。しかし、そうした定義は時代と共に今後も変わり続けていくのだろうし、作り手の底知れぬ想像力や通例をはみだす発想こそが、この領域にある可能性を押し広げていくことに違いはない。今号は私にとって原点回帰のようでもあり、ここで取り上げた 4 組のデザイナーやアーティストには、取材協力だけでなく、今改めてグラフィックデザインへの高鳴りを喚起してくれたことに心からの感謝を伝えたいと思う。
けれど、編集部に在籍した十数年の間にクリエイティヴシーンを囲む環境や潮流は当然ながら大きく変わった。グラフィックデザインに関しても同様で、ブランディングやストラテジーなどビジネスと交差する手法が本筋となっていった。それは至極自然な成り行きだったが、先に述べた経緯を辿った私には、そうしたデザインはどうにも味気ないものに感じられて、その場からフェイドアウトせざるを得なくなったのかもしれない。
グラフィックデザインはヴィジュアルランゲージだと誰かが言っていた。言葉では到達できない領域のコミュニケーションを可能にするツールなのだと。まさしく私もそう思う。だからこそ、同一認識の共有が前提となる標識やピクトグラムなどは別にして、こちらの嗜好や傾向を単純視した断定的なデザインには、正直げんなりしてしまう。そこからはそれ以上のコミュニケーションが生まれない。効率化の工程で省かれる余分なものにこそ好奇心や内省の種が隠されているのに、数値で表されるものが成果の全てとされるのなら、どれほど陳腐で白けた世界になってしまうだろう。
今回取材に応じてくれた 4 組は、ルーツも世代も、背景や変遷も万別で、グラフィックデザインに対する捉え方や取り組みもそれぞれに異なる。しかし彼らが作るものは、見る人が受動するだけでなく、感情に波紋を広げて余韻や反響や記憶を呼び起こす、交流することのできる作品だ。そうした人間らしい豊かなコミュニケーションを為せる作品はやはり、作者が課題と向き合い客観的視点に悩んだりしながらも、自らの内にあるものを汲み上げて生まれているとしか思えない。
デザインの分野が細分化し、それぞれの領域が曖昧になっている今、そういった作品をグラフィックデザインと呼んでいいのか私にはわからない。しかし、そうした定義は時代と共に今後も変わり続けていくのだろうし、作り手の底知れぬ想像力や通例をはみだす発想こそが、この領域にある可能性を押し広げていくことに違いはない。今号は私にとって原点回帰のようでもあり、ここで取り上げた 4 組のデザイナーやアーティストには、取材協力だけでなく、今改めてグラフィックデザインへの高鳴りを喚起してくれたことに心からの感謝を伝えたいと思う。
Nigh Magazine
Nahoko Mori
Nahoko Mori
Credits
Inner Resources: Graphic Design
Editor in Chief, Interview and Text
Nahoko Mori
Art Direction and Design
Kamikene (Hatos, Normalization)
Marketing Direction
Chikako Ibe
Translation to English
Luke Baker
Lauren Blythe
Anthony Hitoshi Miller
Translation to Japanese:
Nahoko Mori
Special Thanks to
Yoshiaki Fujimori (GB Inc.)
Daisuke Ishizaka (Hatos Inc.)
Platform:
Cargo Collective
Publisher:
Nigh Magazine
Contact
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