Nigh 5

取材を終えた後もしばらく余韻が続いて、その真意に近づこうと彼の語ったことを反芻していた。ファッションへの見識は深くないが、 NUMBER (N)INE のデビュー間もなくから宮下貴裕の名は知っていたし、これまでに彼が受けた数少ないインタビューの記事もいくつか目を通していた。しかし、この取材で初めて対峙した彼の観点は私が想像していたものとは根本的に何かが違っていて、なのに不思議と、そこで得たのは単なる驚きではなく  “気づき”  のような感覚に近い。彼が抱く憧憬の対象や湧きあがる疑問、ある領域へ辿り着こうと悶えながらも進める歩みや、本質的な進化を強く求める思い。一人のファッションデザイナーの内で織り交わるそれら全てに一筋の貫かれたものが感じられて、そこに触れたことで少なからず理解が深まったからだろうか。ファッションの正当な評価基準は知る由もないが、この取材を経たことで、今後はどのデザイナーのコレクションを見るにしても捉え方が変わる気がしている。