パンデミックの兆候が色濃くなり始めた2020年春、P.A.M. が自身のウェブサイト内に突如として立ち上げた『Positive Messages』には、彼らと交流を持つ幅広いジャンルのクリエイターが世界中から参加し、 「ポジティヴなこと」 「皆と共有したいもの」という P.A.M. からのリクエストを各々で解釈して寄せたメッセージが掲載されている。
2021年 2 月の現時点で57点に及ぶそれらのメッセージにフォーマットは一切無く、「みんなで頑張ろう」といったありふれた文言はひとつも見当たらない。その内容はアートワークからレシピやエッセイまで実に多種多様で、基本的には全て英語で記されていることもあり、パッと見には少し難解に映るかもしれない。また、小説や映画、音楽といった文化的なものの大半と同じように、捉え方は受け入れる側の感性や状況、タイミングに委ねられている。とはいえ、世界中が戸惑い、暗く沈む現在、多くの人々にとって心深くに通じるものや身に得るものが確実にあって、さらに全体を通しては希望の光のようなものが感じられるように思う。
『Nigh Magazine』創刊号にあたる今号では、暗雲立ち込める今を「新時代 (New Age) の夜明け」と捉えるこのプロジェクトを軸に、発起人の P.A.M. とこれに参加した 8 組へのインタビューを、作品や最近のスナップ写真と共にお届けする。未だかつて経験のない状況下において、これまで以上にさまざまなことを感じ、考え、祈り、想像力を働かせたであろう彼らのメッセージと言葉は、きっと私たちに新たな観点を示してくれるはずだ。また、取材した私がそうであったように、彼らの尽きることのないクリエイティヴィティは、画面の向こう側の単なる鑑賞物ではなく、もっと身近で温かみのある励ましとなって心を奮い立たせてくれるだろう。
そして、イントロダクションの最後に「Positive Messages」の第 1 弾として Brian Close から寄せられたホピ先住民族の言葉を紹介したい。このプロジェクトのエッセンスを、少なくともその片鱗を、読者の皆さんに感じてもらえることを願って。
Nigh Magazine
Nahoko Mori