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Nigh Magazine
Issue 3

Afterwords




 巻頭のイントロダクションであんなふうに述べてはいても、実際のところ私自身、このパンデミックの影響でひどく落ち込んだ時もあるし、多かれ少なかれ皆そうだろうと思う。一方で、それを言っても何も始まらないという風潮があって、とはいえ無理してポジティヴを装うのもそれはそれで難しい。なにしろ一番辛かったのは、大自然の中で極上の音楽に包まれて身を揺らす機会が遠のいてしまったこと。この未曾有の出来事の渦中にたかだか娯楽が減ったくらいで大袈裟だと非難されかねないが、私にとってはいち大事。ストレスが発散できないというだけではない。美しい空気と良質な音楽に身を委ねていると、もやもやが濾過されるように考えがクリアになり、それを言葉に変換できたり、そこから新たな発想も湧いてくる。さらにそうした場面で人と出会い、語り合うことで、次なるイメージや発見へと繋がる。その機会が失われるのは、風穴を塞がれてしまうようなことなのだから。

 そんな状況下でも大きな拠りどころとなったのは、この雑誌の取材を通して叶うさまざまな出会いだった。彼らが成す際限のない創意工夫には常に驚かされ、彼らが語る思想や真情には新たな気づきがあって多くを学ぶ。そこから得る示唆は何ものにも代え難く、視野を広げ、物事の捉え方を刷新してくれる。そしてまた、心を開いて自分の感覚を知り、感情に寄り添い、受け入れることで、自分の素直な意思が鮮明になっていく。世評に迎合し、潮流に乗っているだけでは、この先、満たされるほどの経験はできなくなるだろう。自らの価値観で捉え、自らの意思で判断して進んでいかなくては。

 実はこの夏、軒並み中止となった野外音楽イベントの中で開催された数少ないもののひとつに足を運んだ。のどかな自然が広がる山の上、主催者の徹底した準備と労力と決意のもと、心から音楽を愛する者たちが集っていた。お互いを尊重し、配慮し合いながら自分たちが作りだす秩序の中で、それぞれに最高の尊い時間を過ごすことができた。そこにいたから味わえた瞬間があり、見える景色があった。それを共有した誰もが皆、主催者の覚悟に心からの感謝を抱いたはずだけど、その開催に世間からは非難の声が相次いだ。多様性がスローガンのように叫ばれる現在なのに、少数意見に耳を傾けることもなく世論を盾に集中砲火を浴びせる閉塞した状況には理不尽を感じてしまう。確たる意思も持たないまま批判だけを投げつける者と、モラルと覚悟を抱き自分を信じて行動に臨む者、いったいどちらが次への扉を開くだろうか。新たな時代の夜明けを望むだろうか。

 風穴を開けて、澱むことなく自由に踊り続けたい。自分が何者でもないことを知りながら自分を信じ、自分の心が揺り動かされるものを信じたい。そしてそれを純粋に丁寧に共有していきたい。この思いがこの先『Nigh Magazine』の「変わらないもの」になっていくのだと思う。 






Nigh Magazine
Nahoko Mori








Credits


Nigh Magazine Issue 3:
Things change (but not all)



Editor in Chief, Interview and Text
Nahoko Mori

Art Direction and Design
Kamikene (Hatos, Normalization)

Marketing Direction
Chikako Ibe

Translation to English
Lauren Blythe
Anthony Hitoshi Miller
Translation to Japanese:
Nahoko Mori

Special Thanks to
Yoshiaki Fujimori (GB Inc.)

Platform:
Cargo Collective

Publisher:
Nigh Magazine




Contact
Nigh Magazine: contact@nigh.jp  ︎

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