2021年 2 月の創刊から今回で 6 号目を迎えた。創刊当時は「どう入ればいいかわからない」「見方が難しい」という意見も耳にしたが、それは当然の感想かもしれない。『Nigh Magazine』は従来の印刷された雑誌を意識して作られている。だから、最初に表紙があって、目次があり、特集記事へと続く。さらに巻末にはこうして編集後記まである。トップページでコンテンツを一覧できる利便性重視のウェブサイトに馴染んでいると、だいぶ勝手が違うのでややこしく感じるのだろうが、実はいたってシンプルな作りだ。また、アナログ雑誌と同じく、 1 号 1 号でテーマを設け、全てを作りあげてからリリースするため、更新頻度はかなり低く、毎日チェック見されるメディアではない。その反面、いつ訪れてもらっても、また、時が経ってから読み返してもらっても、鮮度に欠けることはない。

今回、自分と同年代である Ill-Studio の Thomas Subreville の話を聞いていて、まさにそうだと頷いたひとつが、「我々はインターネットの無い時代に育った最後の世代であり、同時に、インターネットの普及以降の時代にも順応し、両方の長短を経験から知る稀な世代だ」ということだ。そしてまた彼も同じようなことを言っていたが、若い頃、私にとって特に好きなカルチャーやヴィジュアルに触れる主な糸口は雑誌だった。アイデアや取材を集結して作られた雑誌の中の世界に浸ると、雰囲気や匂いや感触までもが伝わってくるようで、そこから多くのインスピレーションを得て、関心を深めて文脈を辿る動機にもなった。それらは捨てられずに、家の本棚には今も国内外のあらゆる雑誌がずらりと並んでいる。おそらく20年以上前のものもあるはずで、時々取り出してはパラパラとめくる。当然昔の雑誌からは当時の時代を感じるが、今なお新鮮な発見と出会うこともある。私はそうした雑誌が大好きで、雑誌という文化も大好きなのだ。

しかし、最近では雑誌を買うことは滅多にない。理由はさまざまあるが、そんな自分たちでも、今現在の観点で改めて雑誌を作りたい。以前の私たちと同じような雑誌体験を共有し、かつ、オンラインだからなし得る新しい感覚の共有を試みたい。そうして創刊したのが『Nigh Magazine』だ。モーショングラフィックによる表現、映像や音楽作品の掲載、どこまでも深掘りできる自由なスペース。とはいえ、表面的な最新情報を効率的に摂取することに慣れた現在、これほどのロングインタビューと向き合える人はそう多くないだろう。それでも、私たちと共通の感覚を見いだし、ここでしか得られない示唆を予感して引き寄せられる人はいるはずだ。雑誌とは本来そういうものなのだから。

今回のテーマは「Build the Ambience」。ここで取材した 4 組のように、私たちも、その唯一の空気にどっぷりと浸れる雑誌を作りたい。自分たちだけの感覚を大切にしつつ、時代の動きを受け入れて、しかし見栄を張らず、誰に媚びることもせず、誠実に作り続けていきたいと思っている。